炎症性腸疾患(IBD)、とくにクローン病における肛門部病変は、歯周炎と関連があることがスイス・チューリッヒ大学病院のStephan R Vavricka氏らによる症例対照研究で明らかになった。IBDの治療においては、口腔の炎症にも焦点を当てた治療戦略を立てるべきであると考えられる。Inflammatory bowel diseases誌オンライン版2013年11月7日号の報告。
IBD、とくにクローン病の患者においては、しばしば口腔に悪影響が及ぶ。歯周炎は、全身性の自己免疫疾患や炎症性疾患に影響を与えると考えられている。本研究では、歯周炎/歯肉炎マーカーとIBDの関連について分析した。
IBD患者113例(クローン病69例、潰瘍性大腸炎44例)に対し歯科検診を行い、患者背景についても記録した。歯周炎マーカーは、プロービング※1時の出血、アタッチメントロス※2、歯周ポケットの深さ※3から評価した。歯肉炎マーカーは、乳頭部出血指数(PBI)から評価した。目に見える口腔内の病変についても、カルテに記載した。健常人113人を対照群とし、8ヵ月間前向きに比較検討した。
主な結果は以下のとおり。
・歯肉炎マーカー、歯周炎マーカーを認めた症例数は、対照群よりもIBD群で多かった。
・単変量解析とロジスティック回帰分析の結果、クローン病の肛門部病変は歯周炎のリスク因子であった。
・禁煙は、歯周炎のリスクを減少させた。
・歯周炎と患者の重症度(血便や腹痛の程度)に明確な関連は認められなかった。
・クローン病のみのサブグループでは、患者の症状が重いほど(Harvey-Bradshaw index > 10)、歯周炎マーカーのひとつである、歯周ポケット最深部位におけるアタッチメントロスと関連していた。
・歯周炎・歯肉炎以外の口腔病変は、IBD患者の約10%で認められた。
※1:歯周病の検査に使われるプローブ(探針)で歯肉辺縁からポケット底までの深さを測定すること
※2:歯の頭と根の境目の部分からポケット底までの距離が深くなっていること(歯肉上皮とセメント質の付着喪失)
※3:歯肉辺縁から接合上皮の最根尖側端の深さ
(ケアネット 武田 真貴子)