新型インフルに、季節性インフルワクチン有効か?:メキシコからの最新報告

提供元:ケアネット

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公開日:2009/10/23

 



新型インフルエンザウイルス(汎発性2009インフルエンザA/H1N1)に対し、2008~2009年の季節性インフルエンザ3価不活化ワクチンが限定的ではあるが一定の有効性を示すことが、メキシコ国立衛生研究所のLourdes Garcia-Garcia氏らが行った症例対照研究で示唆された。特に重症例に対する効果が期待されるという。2009年4~6月にかけて、新型インフルエンザA/H1N1の感染確定例が報告され、WHOは感染爆発(パンデミック)の警戒レベルをフェーズ3から6へ引き上げた。7月6日までに、122ヵ国から公式に報告された感染例数は9万4,512件にのぼった。これまで、季節性インフルエンザワクチンは新型インフルエンザウイルスに対する有効性をほとんどあるいはまったく持たないと考えられていた。BMJ誌2009年10月10日号(オンライン版2009年10月6日号)掲載の報告。

メキシコの流行期における後ろ向きの症例対照研究




研究グループは、メキシコの流行期におけるインフルエンザA/H1N1感染例に対する2008~2009年の季節性3価不活化ワクチンの効果の評価を目的に、レトロスペクティブな症例対照研究を実施した。

2009年3~5月の間に、メキシコ市の専門病院(国立呼吸器疾患研究所、178床)を受診し、検査にてインフルエンザA/H1N1が確認された60例と、他の疾患(インフルエンザ様疾患と肺炎は除外)の罹患者180例(対照群)について、年齢および社会経済的条件をマッチさせた調査を行った。

新型インフル感染群および対照群の患者本人あるいは近親者に、直接面談あるいは電話にて、2008~09年の冬季に季節性3価ワクチンの接種を受けたか否かについて質問した。

ワクチン接種者で低い新型感染率(有効率73%)、ワクチン接種の新型感染例に死亡例なし




季節性インフルワクチンの接種を受けていたのは、新型インフル感染群が8例(13%)、対照群は53例(29%)であった(粗オッズ比:0.344、p=0.012)。

新型インフル感染群は、対照群に比べ入院[98%(59例) vs. 34%(61例)、p<0.001]、侵襲性の機械的人工呼吸器装着[43%(26例) vs. 2%(4例)、p<0.001]、死亡[30 %(18例) vs. 1%(2例)、p<0.001]の頻度が有意に高かった。

一方、インフルエンザ関連合併症のリスクが高い慢性的な基礎疾患の頻度は、新型インフル感染群よりも対照群のほうが高かった[全体:25%(15例) vs. 67%(120例)、p<0.001、喘息:3%(2例) vs. 28%(51例)、p=0.001、閉塞性睡眠時無呼吸:3%(2例) vs. 12%(22例)、p=0.06、COPD:2%(1例) vs. 9%(16例)、p=0.07]。

多変量解析では、新型インフル感染はワクチン接種者(補正オッズ比:0.27、p=0.004)およびインフルエンザ関連合併症リスクの高い基礎疾患患者(同:0.15、p<0.001)で有意に低かった。

入院患者(新型インフル群:59例、対照群:61例)においても、新型インフル感染はワクチン接種者(同:0.23、p=0.018)および高リスク基礎疾患患者(同:0.20、p<0.001)で有意に低く、基礎疾患のない患者(新型インフル群:45例、対照群:60例)に限っても感染率はワクチン接種者(同:0.14、p=0.003)で有意に低かった。

季節性ワクチンの新型インフルに対する有効率は73%であった。新型インフル感染者のうち、季節性ワクチン非接種例52例の死亡率は35%(18例)であったのに対し、接種例8例に死亡は認めなかった。

これらの知見により、著者は「少数例に関するレトロスペクティブな評価の初期結果という限界はあるが、2008~2009年の季節性3価不活化ワクチンは、汎発性2009インフルエンザA/H1N1(特に重症例)に対し有効なことが示唆された」と結論している。

(菅野守:医学ライター)