新規の選択的エンドセリンA受容体拮抗薬darusentanは、3剤以上の降圧薬を用いても降圧目標を達成できない治療抵抗性の高血圧患者にさらなる降圧をもたらすことが、アメリカNew York州立大学のMichael A Weber氏らが実施した無作為化試験で示された。治療抵抗性高血圧とは、利尿薬を含む3剤以上を推奨用量の上限または患者が耐用可能な最大用量まで使用しても降圧目標に到達しない場合と定義される。高血圧や糖尿病の患者の循環血中ではエンドセリン1が増加しており、その受容体を遮断するアプローチは治療抵抗性高血圧に有効な可能性があるという。Lancet誌2009年10月24日号(オンライン版2009年9月14日号)掲載の報告。
117施設から登録された379例を3種の用量とプラセボに割り付け
研究グループは、治療抵抗性高血圧患者における新たな血管拡張薬darusentanの降圧作用の評価を目的に、二重盲検プラセボ対照無作為化試験を行った。
北米、南米、ヨーロッパ、ニュージーランド、オーストラリアの117施設から、利尿薬を含む3剤以上を上限量または最大耐用量まで投与しても収縮期血圧が≧140mmHg[糖尿病あるいは慢性腎臓病(CKD)がある場合は≧130mmHg]の患者379例が登録された。これらの患者が、darusentan 50mg(81例)、100mg(81例)、300mmHg(85例)、プラセボ(132例)をそれぞれ1日1回、14週間投与する群に無作為に割り付けられた。
患者とすべての研究者には治療割り付け情報は知らされなかった。主要評価項目は、坐位の血圧(収縮期/拡張期)の変化とした。
利尿薬との併用療法が新たな有効な治療戦略となる可能性も
無作為割り付けされた全例が解析の対象となった。治療前後における診察室血圧の低下の平均値は、darusentan 50mg群が17/10、100mg群が18/10、300mg群が18/11、プラセボ群は9/5mmHgであり、プラセボに比べdarusentanの有意な降圧効果が認められた(p<0.0001)。
主な有害事象は体液貯留に関連するもので、浮腫あるいは体液うっ滞の発現率がプラセボ群の14%に比べdarusentanは27%と高頻度であった。プラセボ群の1例が心突然死をきたし、3つのdarusentan群を合わせて5例に心臓関連の重篤な有害事象が見られた。
著者は、「3剤以上の降圧薬を用いても目標血圧に至らない患者において、darusentanはさらなる降圧をもたらす」と結論し、「darusentanに、体液貯留対策を兼ねて有効な利尿薬を併用するアプローチは、治療抵抗性高血圧に対する新たな治療戦略として有効な可能性がある」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)