細菌性髄膜炎に対するデキサメタゾンの補助的投与が、成人に対して有効であるかどうかは明らかとなっていない。ベトナム・ホーチミン市にある国立熱帯病研究所病院Nguyen Thi Hoang Mai氏らの研究グループは、細菌性髄膜炎が疑われる14歳以上の患者435例を対象に、デキサメタゾンの無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った。NEJM誌12月13日号より。
死亡・障害リスクの低下はデキサメタゾンと無関係
研究はデキサメタゾンの投与によって、1ヵ月後の死亡リスク、6ヵ月後の死亡リスクまたは障害リスクが低下するかどうかを目的に行われた。
試験は、217例をデキサメタゾン投与群に、218例をプラセボ投与群に割り付けられ行われた。そのうち細菌性髄膜炎が確定できたのは300例(69.0%)で、123例(28.3%)が髄膜炎の可能性が高いと診断され、12例(2.8%)には他の診断が下された。
全例解析による結果、1ヵ月後の死亡リスク(相対リスク0.79、95%信頼区間:0.45~1.39)、6ヵ月後の死亡または障害リスク(同0.74、0.47~1.17)の有意な低下とデキサメタゾン投与とは関連していないことが示された。
効果は微生物学的診断が確定した患者に限定される?
しかし、細菌性髄膜炎確定群では、1ヵ月後の死亡リスク(同0.43、0.20~0.94)、6ヵ月後の死亡または障害リスク(同0.56、0.32~0.98)で有意な低下がみられた。これらの効果は、細菌性髄膜炎の可能性が高いと診断された群ではみられなかった。
多変量解析の結果、細菌性髄膜炎の可能性が高いとされた例におけるデキサメタゾン投与が、1ヵ月後の死亡リスク増加と有意に関連していることが示された。しかしこの所見について研究グループは、「投与群に結核性髄膜炎のケースが存在していた可能性も否定できない」としている。
以上から、デキサメタゾンが細菌性髄膜炎の疑われる少年以上全年齢層の予後を改善するわけではなく、有益効果は、事前に抗生物質投与を受けた患者を含め、微生物学的検査を経て診断が確定した患者に限定されるのではないかと結論づけている。
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(医学ライター 朝田 哲明)