プライマリ・ケアにおけるうつ病、非医療者カウンセラーによる共同介入が有効

提供元:ケアネット

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公開日:2011/01/13

 



うつ、不安障害などの「よくみられる精神障害(common mental disorders:CMD)」の症状を呈する患者をプライマリ・ケアで治療する場合、訓練を受けた非医療者カウンセラーとの共同ケアによって病状の回復率が改善することが、ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院のVikram Patel氏らがインドで実施した「MANAS」試験で示された。CMDは世界的な神経精神医学的疾病負担の主原因であり、自殺の増加や医療コストの増大を招き、経済的な生産性を低下させているという。プライマリ・ケアにおけるCMDに対する共同介入の系統的レビューでは、1)スクリーニングのルーチンな実施、2)スタッフの専門的な技量、3)精神科専門医による監督によりアウトカムが改善する可能性が示唆されている。Lancet誌2010年12月18/25日号(オンライン版2010年12月14日号)掲載の報告。

共同介入と強化通常ケアを比較するクラスター無作為化試験




MANAS試験の研究グループは、プライマリ・ケアにおけるCMDに対する非医療者カウンセラーによる介入のアウトカム改善効果を評価する、クラスター無作為化対照比較試験を実施した。

インド、ゴア市のプライマリ・ケア施設を受診し、CMDの判定基準を満たした患者が、訓練を受けた非医療者カウンセラーによる共同的な段階的ケアを受ける群、あるいは強化通常ケアを受ける群(対照群)に無作為に割り付けられた。

共同的な段階的ケアによる介入は、訓練を受けた非医療者であるカウンセラーが患者マネジメントおよび心理社会的な介入を行うもので、プライマリ・ケア医が抗うつ薬を処方し、全体の監督は精神科専門医が行った。

主要評価項目は、治療6ヵ月の時点におけるWHOの『疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10版(ICD-10)』の定義によるCMDの回復とした。

共同介入により回復率が約12%改善、開業医では差を認めず




公的プライマリ・ケア施設と開業医の割合が同じ24のクラスターが、非医療者カウンセラー共同介入群と対照群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。アウトカムの評価が可能であったのは、介入群が85%(1,160/1,360例)、対照群は88%(1,269/1,436例)であった。

治療6ヵ月におけるCMDの回復率は、介入群が65.0%(620例)と、対照群の52.9%(553例)に比べ良好であった[リスク比:1.22(95%信頼区間:1.00~1.47)、リスク差:12.1%(95%信頼区間:1.6~22.5%)]。

介入による効果は公的プライマリ・ケア施設で大きく[65.9%(369例) vs. 42.5%(267例)、リスク比:1.55(95%信頼区間:1.02~2.35)]、開業医受診者では対照群との間に差を認めなかった[64.1%(251例) vs. 65.9%(286例)、リスク比:0.95(95%信頼区間:0.74~1.22)]。

介入群で3例が死亡、4例が自殺を企図し、対照群ではそれぞれ6例ずつであった。自殺死は認めなかった。

著者は、「訓練を受けた非医療者カウンセラーとの共同による段階的な介入は、公的なプライマリ・ケア施設を受診するCMD患者の回復率を改善する」と結論し、「このエビデンスは、メンタル・ヘルスケアの専門家の体制が十分でない環境において、CMDに対するサービスの改善に活用できる」と指摘する。

(菅野守:医学ライター)