優れた臨床家は、睡眠、健康と表情の手がかりを結び付ける術を知っている

提供元:ケアネット

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公開日:2011/01/14

 



観察することの訓練を受けていない人でも、睡眠不足の人を見ると、その人がきちんと寝ている時に比べ、健康を損ない魅力を失い、くたびれていると見て取れることが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のJohn Axelsson氏らによって実証された。Axelsson氏は、「この結果は、人が社会性や臨床的な判断をされる際に、見た目が影響していることを示すものである」としたうえで、「臨床診断において見た目がどれほど影響しているかを理解することの根拠となり、ひいては対診の際に見た目を情報として付加できる根拠ともなる」と結論している。本論は、BMJ誌年末恒例のクリスマス特集論文の1本で、2010年12月18日号(オンライン版2010年12月14日号)に掲載された。

訓練を受けていない人が、写真を見て不健康などを認知できるか検証




Axelsson氏らは、シャーロックホームズのモデルとして知られるジョセフ・ベル教授の「優れた観察と推論で」という臨床診断の教えを基に本試験を行った。

試験は、観察の訓練を受けていない人が、睡眠不足時に撮影された写真を見て、健康や魅力を損なっており、より疲れていると認知するかを検証するというものであった。ストックホルムにある睡眠研究所で、23人の健康な成人(18~31歳、女性11人)と、訓練を受けていない観察者65人(18~61歳、大半がカロリンスカ研究所の学生、女性40人)が参加して行われた。

被験者は、通常睡眠(8時間)後と、睡眠不足時(睡眠を5時間に減じられた上で眠らずに31時間後)にそれぞれ顔写真を撮影され、それら写真を観察者にランダムに示し評価をしてもらった。

主要評価項目は、観察者が評価した睡眠不足時写真と通常睡眠時写真との、健康度、魅力度、疲労度に関する視覚的アナログスケール(VAS、100mm)の差とした。

結果は睡眠と健康の既存モデルに合致




結果、健康度に関する平均VASは、睡眠不足時63(SE 2)vs. 通常睡眠時68(SE 2)で、観察者は睡眠不足時の方を健康的ではないと捉えていたことが認められた(p<0.001)。疲労度についても、同53(SE 3)vs. 44(SE 3)、魅力度についても38(SE 2)vs. 40(SE 2)で、睡眠不足時の方が疲労度が高く、魅力に乏しいと捉えていたことが示された(いずれもP<0.001)。

また、健康度の評価が低下することと、疲労度の評価の上昇および魅力度の評価の低下は関連していることが認められた。

著者は「これら結果は、既存の睡眠と健康の関連モデルに合致していた。今後、臨床設定で、表情の手がかり(facial cue)について検証を行うことが必要と思われる。おそらく優れた臨床家は、睡眠や健康と表情の手がかりとを結び付ける術を知っており駆使しているからだ。このように我々の研究成果は、ベル教授の教えや、俗に言われる“beauty sleep”に隠された健康や魅力に関する判断への洞察を提示するものである」とまとめている。