虚血性心疾患や虚血性脳卒中の既往歴を有する患者における心血管疾患の予防では、ビタミンB類やオメガ(ω)-3脂肪酸を含むサプリメントのルーチンな使用は推奨されないことが、フランス・パリ第13大学衛生医学研究所(INSERM)のPilar Galan氏らが実施した「SU. FOL. OM3」試験で示された。心血管疾患の発症は、ビタミンB類(葉酸、ビタミンB6)やω-3多価不飽和脂肪酸の摂取あるいはその血漿濃度と逆相関を示すことが観察試験で報告されている。しかし、無作為化試験ではビタミンB類の血管疾患に対する有意な作用は確認できず、ω-3多価不飽和脂肪酸の臨床試験では相反する結果が得られているという。BMJ誌2011年1月1日号(オンライン版2010年11月29日号)掲載の報告。
サプリメント摂取による2次予防効果を評価するプラセボ対照試験
研究グループは、虚血性心疾患あるいは虚血性脳卒中の既往歴を有する患者に対するサプリメントとしてのビタミンB類およびω-3脂肪酸の、心血管イベント予防効果を評価する二重盲検無作為化プラセボ対照試験を行った。
フランスの257施設417名の循環器、神経科などの医師のネットワークを介して、45~80歳の心筋梗塞、不安定狭心症、虚血性脳卒中の既往歴を有する患者2,501例が登録された。
これらの患者が、5-メチルテトラヒドロ葉酸(560μg)、ビタミンB6(3mg)、ビタミンB12(20μg)を含むサプリメントを毎日摂取する群(622例)、ω-3脂肪酸(600mg中にエイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸を2対1の割合で含有)を含むサプリメントを毎日摂取する群(633例)、双方を摂取する群(620例)、プラセボ群(626例)に無作為に割り付けられた。
摂取期間中央値は4.7年であった。主要評価項目は主な心血管イベントであり、非致死的心筋梗塞、脳卒中、心血管疾患による死亡の複合エンドポイントと定義した。
いずれのサプリも、主要評価項目にプラセボ群との差を認めず
ビタミンB類群は、血漿ホモシステイン濃度がプラセボ群に比べ19%低下したが、重篤な血管イベントの発症頻度には差を認めなかった(ハザード比:0.90、95%信頼区間:0.66~1.23、p=0.50)。
ω-3脂肪酸群は、血漿ω-3脂肪酸濃度がプラセボ群に比し37%増加したが、重篤な血管イベントの発症頻度は同等であった(ハザード比:1.08、95%信頼区間:0.79~1.47、p=0.64)。
著者は、「虚血性心疾患や虚血性脳卒中の既往歴を有する患者の心血管疾患の予防において、ビタミンB類やω-3脂肪酸を含むサプリメントのルーチンな使用は推奨されない」と結論し、「特に、初回イベントの急性期が経過した後にサプリメントを開始する際、これらは使用すべきでない」としている。
(菅野守:医学ライター)