マルチターゲットの経口チロシンキナーゼ阻害薬であるパゾパニブは、化学療法施行後に病態が進行した非脂肪細胞性の転移性軟部肉腫の新たな治療選択肢となることが、オランダ・Radboud大学医療センターのWinette T A van der Graaf氏らが実施したPALETTE試験で示された。軟部肉腫は成人のがんの1%ほどのまれな間葉腫瘍で、米国では年間約1万1,280人が罹患、約3,900人が死亡し、欧州では年間に10万人当たり5人の割合で発症しているという。パゾパニブは非脂肪細胞性の進行軟部肉腫に対する抗腫瘍効果が確認されている。Lancet誌2012年5月19日号(オンライン版2012年5月16日号)掲載の報告。
パゾパニブの有用性を評価するプラセボ対照無作為化第III相試験
PALETTE試験は、標準治療に抵抗性となった非脂肪細胞性の転移性軟部肉腫患者に対するパゾパニブの有用性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験。
2008年10月9日~2010年2月26日までに13ヵ国72施設から、標準的な化学療法を1~4レジメン施行後に病態が進行した転移性軟部肉腫で、血管新生阻害薬による治療を受けていない患者が登録され、パゾパニブ800mg/日あるいはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。
試験治療終了後のクロスオーバーは行わないこととした。患者、担当医、アウトカムの評価者、解析担当者には治療割り付け情報がマスクされた。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)であった。
PFS中央値が3ヵ月延長、OSには差なし
登録された372例のうち369例が評価可能であり、パゾパニブ群に246例が、プラセボ群には123例が割り付けられた。
PFS中央値はパゾパニブ群が4.6ヵ月と、プラセボ群の1.6ヵ月に比べ有意に延長した(ハザード比[HR]:0.31、95%信頼区間[CI]0.24~0.40、p<0.0001)。全生存期間(OS)はパゾパニブ群が12.5ヵ月、プラセボ群は10.7ヵ月と、両群で同等であった(HR:0.86、95%CI:0.67~1.11、p=0.25)。
最も頻度の高い有害事象は、疲労(パゾパニブ群:65%、プラセボ群:49%)、下痢(58%、16%)、悪心(54%、28%)、体重減少(48%、20%)、高血圧(41%、7%)であった。相対的な用量強度(dose intensity)はプラセボ群が100%、パゾパニブ群は96%だった。
著者は、「化学療法施行後に病態が進行した非脂肪細胞性の転移性軟部肉腫の治療では、パゾパニブが新たな治療選択肢となることが示された」と結論し、「本試験の対象はきわめて予後不良で、不均一な患者集団であり、パゾパニブの有用性が確かめられたことの意義は大きい」としている。
(菅野守:医学ライター)