黒人で高い、男性間性交渉者のHIV感染リスク

提供元:ケアネット

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公開日:2012/08/09

 

 黒人の男性間性交渉者(MSM)は、非黒人MSMに比べHIV陽性者が多く、抗レトロウイルス薬併用療法(cART)を受けている者が少なく、低所得などの構造的障壁を持つ者が多いことが、米国疾病対策予防センター(CDC)のGregorio A Millett氏らの検討で示された。2009年の米国のHIV感染者の約4分の1を、全人口の1%に満たない黒人MSMが占め、人種間の感染隔差の最大の要因となっているという。CDCによれば、2009年の若年の黒人MSMにおける新規HIV感染者は2006年に比べ48%も増加した。Lancet誌2012年7月28日号(オンライン版2012年7月20日号)掲載の報告。

黒人MSMのHIV感染リスク関連因子をメタ解析で評価

 研究グループは、カナダ、英国、米国の黒人のMSMにおけるHIV感染リスクの関連因子の評価を目的にメタ解析を行った。

 データベース(Embase、Medline、Google Scholar)およびオンライン版の学会記録集に登録されたデータ(1981年1月1日~2011年12月31日)を検索して、HIVの感染リスクや感染状況に関連するアウトカムを人種間で量的に比較した試験を抽出した。

 全試験のデータをアウトカムごとに統合して全体の効果量(effect size)を推算し、黒人MSM(10万6,148人)の黒人以外の人種のMSM(58万1,577人)に対するサマリー・オッズ比(OR)に変換した。

構造的障壁の除去、治療を受けにくい状況の改善が必要

 カナダの7試験、英国の13試験、米国の174試験が解析の対象となった。いずれの国でも、HIV感染者と非感染者間の安全でない性交渉の頻度は、黒人MSMと黒人以外の人種のMSMで同等だった。カナダと米国では、黒人MSMは非黒人MSMに比べ薬物使用歴のある者の頻度が有意に低かった[カナダ、OR:0.53、95%信頼区間(CI):0.38~0.75、米国、OR:0.67、95%CI:0.50~0.92]。

 英国と米国では、黒人MSMは非黒人MSMに比べHIV陽性者が有意に多かった(それぞれ、OR:1.86、95%CI:1.58~2.18、OR:3.00、95%CI:2.06~4.40)が、両国ともHIV陽性黒人MSMはHIV陽性非黒人MSMよりもcARTの施行率が有意に低かった(それぞれ、OR:0.78、95%CI:0.69~0.88、OR:0.40、95%CI:0.26~0.62)。

 米国では、HIV陽性黒人MSMはHIV陽性非黒人MSMに比し、健康保険加入者、CD4陽性細胞数>200/μL、cART服薬遵守、ウイルス抑制の割合が低かった。とくに、米国の黒人MSMは、HIV感染リスクを増加させる構造的障壁(失業、低所得、被拘禁歴、低学歴など)を有する者が非黒人MSMの2倍以上多かったが、HIV感染に対する予防的行動をとる者が有意に多かった(OR:1.39、95%CI:1.23~1.57)。

 米国では、HIV感染関連因子のうち、構造的障壁、性的パートナーの年齢や人種については黒人MSMと非黒人MSM間に大きな差がみられたが、性的リスク(肛門性交、コンドーム使用、男性パートナー数など)は両群間でほとんど差がなかった。

 著者は、「黒人MSMにおける高頻度のHIV感染状況を解消するには、構造的障壁やHIV治療を受けにくい環境を改善する必要がある」と結論している。

(菅野守:医学ライター)