糖尿病患者の冠動脈病変、どのステントが最も有効か?

提供元:ケアネット

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公開日:2012/10/05

 

 冠動脈病変を有する糖尿病患者に対する冠動脈ステント留置術では、現時点で使用可能なすべての薬剤溶出ステントがベアメタルステントよりも有効で、安全性も良好なことが、米国・ニューヨーク大学医学部のSripal Bangalore氏らの検討で示された。糖尿病は経皮的冠動脈インターベンション施行後の転帰を増悪させることが知られている。長期的な有効性や安全性につき、現時点で使用可能な4つの薬剤溶出ステント同士あるいはベアメタルステントとの比較試験が数多く行われているが、どのステントが最も優れるかは明らかでないという。BMJ誌2012年9月22日号(オンライン版2012年8月10日号)掲載の報告。

糖尿病患者に対する各種ステントの有効性をメタ解析で評価
研究グループは、糖尿病患者の冠動脈病変の治療における現行の薬剤溶出ステントおよびベアメタルステントの有効性と安全性を評価するために、混合治療比較法によるメタ解析を行った。

PubMed、Embase、CENTRALを検索し、新規冠動脈病変を対象に4つの恒久的な薬剤溶出ポリマーステント(シロリムス、パクリタキセル、エベロリムス、ゾタロリムスの各溶出ステント)およびベアメタルステントを比較した無作為化臨床試験(2012年4月までに発表、糖尿病患者50例以上を含む)の論文を抽出した。

有効性の主要評価項目は標的血管に対する血行再建術の施行とし、安全性の主要評価項目は死亡、心筋梗塞、ステント血栓症の発生とした。

エベロリムス溶出ステントが最も有効かつ安全な可能性
42試験(2万2,844人・年のフォローアップ)が解析の対象となった。

いずれの薬剤溶出ステントも、ベアメタルステントに比べ標的血管血行再建術の施行率を有意に低減したが、各薬剤溶出ステントの有効性には差が認められた。

すなわち、ベアメタルステントよりも、シロリムス溶出ステントは血管再建術施行率を62%(率比:0.38、95%信頼区間[CI]:0.29~0.48)、パクリタキセル溶出ステントは53%(同:0.47、0.35~0.61)、エベロリムス溶出ステントは69%(同:0.31、0.19~0.47)、ゾタロリムス溶出ステントは37%(同:0.63、0.42~0.96)抑制した。

エベロリムス溶出ステントの有効性が最も高い確率は87%であった。一方、糖尿病患者におけるResoluteゾタロリムス溶出ステントのデータは限定的だった。

薬剤溶出ステントは、超遅発性血栓症を含む安全性についても、ベアメタルステントに比べリスクを増大させることはなく、良好だった。ステント血栓症に関する安全性がエベロリムス溶出ステントで最も高い確率は62%に達していた。

著者は、「冠動脈病変を有する糖尿病患者に対する冠動脈ステント留置術では、現時点で使用可能なすべての薬剤溶出ステントがベアメタルステントよりも有効で、安全性が劣ることもなかった」と結論し、「エベロリムス溶出ステントが、有効性、安全性のいずれにおいても相対的に優れることが示唆された」としている。

(菅野守:医学ライター)