ICU患者へのHES使用、90日死亡率は有意差なし、腎代替療法リスクは2割増/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2012/11/28

 

 ICUの患者に対する輸液蘇生における代用血漿剤のヒドロキシエチルデンプン(HES、商品名:サリンヘスなど)の使用について、生理食塩水を用いた場合と比較した90日死亡率は有意差は認められなかったことが示された。一方で、HESを用いた患者では生理食塩水を用いた場合と比べて腎代替療法を受けるリスクが2割ほど高かった。オーストラリア・George Institute for Global HealthのJohn A. Myburgh氏らが、ICU入室患者7,000人について行った試験で明らかにしたもので、NEJM誌2012年11月15日号(オンライン版2012年10月17日号)で発表した。

32のICUで無作為化試験、90日死亡率などを比較
 Myburgh氏らは2009~2012年にかけて、オーストラリアとニュージーランドの32ヵ所のICUを通じ、試験を行った。ICUに入室した7,000人を無作為に2群に分け、一方は6%HESを0.9%食塩水に混ぜた輸液蘇生投与を行い、もう一方は0.9%食塩水のみの輸液蘇生投与を行った。同投与は、ICUからの退室、死亡または無作為化後90日まで継続した。

 主要アウトカムは、90日死亡だった。副次アウトカムは、急性腎障害、急性腎不全、腎代替療法の発生率などとした。

 被験者の平均年齢は、HES群63.1歳、生理食塩水群62.9歳で、男性はそれぞれ60.5%と60.3%だった。

90日死亡率は両群とも17~18%、腎代替療法リスクはHES群が生理食塩水群の1.21倍
 その結果、追跡期間中に死亡したのは、HES群3,315人中597人(18.0%)、生理食塩水群3,336人中566人(17.0%)で、両群間に有意差は認められなかった(相対リスク:1.06、95%信頼区間:0.96~1.18、p=0.26)。

 また、副次アウトカムについて、腎代替療法の実施率は、HES群3,352人中235人(7.0%)で生理食塩水群3,375人中196人(5.8%)と、HES群で2割ほど高率だった(相対リスク:1.21、同:1.00~1.45、p=0.04)。急性腎障害の発生率は、HES群が34.6%に対し生理食塩水群が38.0%と生理食塩水群が高く(p=0.005)、急性腎不全の発生率はそれぞれ10.4%と9.2%だった(p=0.12)。

 さらに、掻痒や皮膚の発疹などといった有害事象の発生について、HES群5.3%、生理食塩水群2.8%と、HES群で有意に高率だった(p<0.001)。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)