腹部手術時の癒着防止剤、有益なのは?/Lancet

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2013/10/10

 

 腹部手術における癒着防止剤として、酸化再生セルロースとヒアルロン酸カルボキシメチルセルロースは安全に癒着発生を減少することが示された。オランダ・ナイメーヘン・ラットバウト大学医療センターのRichard P G ten Broek氏らがシステマティックレビューの結果、報告した。癒着は腹部手術における最も頻度が高い長期合併症の原因で、小腸閉塞、再手術、女性の不妊や慢性疼痛を引き起こす可能性がある。癒着形成防止剤は、その重症度を軽減することが示されているにもかかわらず、まれにしか用いられていない。その要因として癒着に対する過小評価があるようだが、研究グループは、臨床使用が承認されている4つの癒着防止剤の有益性と有害性について検証した。Lancet誌オンライン版2013年9月27日号掲載の報告より。

癒着防止剤についてシステマティックレビューとメタ解析

 癒着防止剤の有効性と安全性を検証した先行レビューでは、解析に含んだ試験の結果が、減少に失敗もしくは臨床的に意義のあるアウトカムを評価していなかったため、使用に関する有用なエビデンスを示すことができなかった。そこで研究グループは、そのような場合に開発されたエラーマトリックスアプローチ法を用いて、癒着防止剤の有益性と有害性を評価するシステマティックレビューとメタ解析を行った。

 PubMed、CENTRAL、Embaseをソースに腹部手術における癒着防止剤として、酸化再生セルロース、ヒアルロン酸カルボキシメチルセルロース、イコデキストリン、ポリエチレングリコールの4つについて評価した無作為化試験を検索した。2名の研究者が文献の特定とデータの抽出を行った。

 評価は、事前設定した臨床関連の9等級のアウトカムについて、癒着防止剤使用vs. 非使用を比較して行われた。

 主要アウトカムは、癒着性小腸閉塞のための再手術施行とした。

重大な有害イベントの増大と関連している癒着防止剤はなかった

 検索の結果1,840試験がヒットし、メタ解析には28試験(5,191例)が組み込まれた。

 系統的および無作為化エラーのリスクは低く、また、主要アウトカムとした癒着性小腸閉塞のための再手術に関して、酸化再生セルロース、ポリエチレングリコールの効果については報告例がなかった。

 解析の結果、酸化再生セルロースは癒着発生率を低下することが示された(相対リスク[RR]:0.51、95%信頼区間[CI]:0.31~0.86)。

 癒着性小腸閉塞のための再手術の発生は、ヒアルロン酸カルボキシメチルセルロースが軽減する(同:0.49、0.28~0.88)というエビデンスがいくつか認められた。一方で、癒着性小腸閉塞の再手術に関して、イコデキストリンは有意な群間差がみられなかった(同:0.33、0.03~3.11)。

 重大な有害イベントの増大と関連している癒着防止剤はなかった。

(医療ライター 武藤 まき)