2型糖尿病でステージ4の慢性腎臓病(CKD)の患者に対する、新規開発中の転写因子Nrf2活性化剤バルドキソロンメチル(bardoxolone methyl)は、末期腎不全(ESRD)または心血管疾患死の抑制に効果が認められず、また心血管イベントリスクがバルドキソロンメチル群で有意に増大したため、開発試験を中止したことが発表された。オランダ・フローニンゲン大学のDick de Zeeuw氏らが、2,000例超を対象に行った第3相臨床試験「BEACON」の結果、報告した。NEJM誌オンライン版2013年11月9日号掲載の報告より。
バルドキソロンメチルをステージ4のCKD患者に20mg/日投与
糖尿病性腎障害は、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系阻害薬により進行を遅らせることが可能となっているが、リスクはなお高いまま残る。一方で、転写因子Nrf2活性の阻害と酸化ストレスと炎症が関与していることが明らかとなり、バルドキソロンメチルについてヒトを対象とした52週間の試験で、クレアチニン値を抑制することが示されていた。
それらの知見を受けてBEACON試験は、バルドキソロンメチルがESRDリスクや心血管疾患による死亡を減少すると仮定して行われたもので、2011年6月~2012年9月に、欧米、オーストラリア、カナダ、イスラエル、メキシコにおいて、2型糖尿病でステージ4のCKD患者2,185例を対象に行われた。
被験者は無作為に2群に分けられ、一方にはバルドキソロンメチルを20mg/日、もう一方にはプラセボが投与され、ESRDまたは心血管疾患死を主要エンドポイントに追跡された。ステージ4のCKDの定義は、推定糸球体濾過量(eGFR)15~30mL/分/1.73m
2だった。
バルドキソロンメチル群で心不全による入院・死亡リスクが1.83倍
その結果、試験は追跡期間中央値9ヵ月の時点で、プラセボ群よりもバルドキソロンメチル群での心血管イベントの発生が高率に認められ、試験の中止が勧告された。
同時点の主要エンドポイントの発生率は、バルドキソロンメチル群69/1,088例(6%)、プラセボ群69/1,097例(6%)と、両群で同等だった(ハザード比:0.98、95%信頼区間:0.70~1.37、p=0.92)。バルドキソロンメチル群におけるESRDの発生は43例、心血管疾患死は27例だった。プラセボ群では、それぞれ51例、19例だった。
副次アウトカムでは心不全による入院または死亡が、プラセボ群55例の発生に対し、バルドキソロンメチル群では96例で、リスクは1.8倍に上った(ハザード比:1.83、同:1.32~2.55、p<0.001)。
また、バルドキソロンメチル群でプラセボ群よりも、eGFR、血圧、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)が有意に増大し、体重については有意な減少がみられた。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)