太り過ぎのリスクは、血圧、脂質、血糖のコントロールによってかなり解消できる/Lancet

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2013/12/18

 

 高BMIにより冠動脈心疾患や脳卒中のリスクが増大した集団では、血圧、コレステロール、血糖を低下させることで、リスクの増分が大幅に減少することが、米国・ハーバード公衆衛生大学院のGoodarz Danaei氏らGlobal Burden of Metabolic Risk Factors for Chronic Diseases Collaboration(BMI Mediated Effects)の調査で示された。この30年間で、世界的にBMIが上昇し糖尿病罹患者数が増加しているのに対し、全体的な平均血圧やコレステロールは低下または横ばいの状況だという。これら3つのメタボリック・リスク因子を改善することで、高BMIによる有害な作用をどの程度軽減できるかは、重要な臨床的かつ公衆衛生学的な課題であった。Lancet誌オンライン版2013年11月22日号掲載の報告。

総計約1,800万人、冠動脈心疾患5万7,000件、脳卒中3万1,000件につき解析
 研究グループは、冠動脈心疾患や脳卒中の発症に及ぼすBMIの影響が、どの程度血圧やコレステロール値、血糖値に依存しているかを定量化し、これらの因子の依存度を評価する調査を行った。

 1948~2005年までに発表された97件(東・東南アジア33件、西ヨーロッパ32件、北米15件、オーストラリア・ニュージーランド10件、南米・中央/東ヨーロッパ・北アフリカ・中東7件)の前向きコホート試験(総参加者数約1,800万人)のデータをプールした。イベント発生数は、冠動脈心疾患が5万7,161件、脳卒中は3万1,093件だった。個々のコホートから、18歳未満、BMI値20未満の参加者、および冠動脈心疾患、脳卒中の既往歴のある参加者を除外した。

 BMIの冠動脈心疾患および脳卒中に対するハザード比(HR)を、血圧、コレステロール値、血糖値のすべての組み合わせで調整した場合としない場合に分けて推算。ランダム効果モデルを用いてHRをプールし、3つのメディエーターで調整後の増分リスクの減少を算出した。

冠動脈心疾患の増分リスクの約3分の1、脳卒中の約3分の2を血圧が占める
 BMI値が5増加するごとに、交絡因子調整済みのHRが冠動脈心疾患で1.27(95%信頼区間[CI]:1.23~1.31)、脳卒中で1.18(同:1.14~1.22)に上昇した。

 3つのメタボリック・リスク因子で調整したところ、HRは冠動脈心疾患が1.15(95%CI:1.12~1.18)へ、脳卒中は1.04(同:1.01~1.08)へと低下し、BMIによる冠動脈心疾患の増分リスクの46%(同:42~50)、また脳卒中の増分リスクの76%(同:65~91)が、高血圧や高血糖、高コレステロールによって誘導されることが示唆された。

 血圧が最も重要なメディエーターであり、BMIによる冠動脈心疾患のリスクの増分の31%(95%CI:28~35)、脳卒中の場合はその65%(同:56~75)を占めた。これら3つのメディエーターによって誘導されるリスクの増分の割合は、アジアと西欧(北米、西ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランド)との間で差は認めなかった。

 正常体重(BMI:20~25未満)に比べ、過体重(同:25~30未満)および肥満(同:30以上)によって冠動脈心疾患および脳卒中のリスクが有意に増大し、3つのメディエーターによって誘導された過体重によるリスクの増分は50%(95%CI:44~58)、肥満による増分は44%(同:41~48)だった。脳卒中の発症に占める過体重のリスクは98%(同:69~155)、肥満のリスクは69%(64~77)だった。

 著者は、「血圧、コレステロール、血糖を低下させる介入により、高BMIによる冠動脈心疾患の増分リスクが約半分に減少し、脳卒中の増分リスクは約4分の3にまで低下した。肥満よりも過体重でリスクが大きかった」とまとめ、「3つのメディエーターを低下させる介入により、高BMIが心血管疾患に及ぼす影響のかなりの部分が解消される可能性がある。すべてのベネフィットを達成するには最適な体重の維持が必要である」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)