アルツハイマー病の焦燥性興奮にシタロプラムは有効か/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2014/02/28

 

 アルツハイマー病とみられ焦燥性興奮(agitation)を呈し心理社会的介入を受けている患者に対して、SSRI薬のシタロプラムの追加治療は、焦燥性興奮および介護者の負担を有意に減少することが、米国・ロチェスター大学医歯学部のAnton P. Porsteinsson氏らによるプラセボ対照の無作為化試験の結果、示された。ただし、認知機能や心臓への有意な有害作用もみられ、臨床で用いることが可能な用量には限界があることも判明した。先行研究でシタロプラムは、認知症の焦燥性興奮や攻撃性に対する有効性が示唆されていたが、エビデンスは限定的であり、著者らは有効性および安全性、忍容性の検討を行った。JAMA誌2014年2月19日号掲載の報告より。

186例を+シタロプラム群、+プラセボ群に無作為化し9週間治療
 研究グループは、アルツハイマー病患者における焦燥性興奮に対するシタロプラムの有効性評価を主要目的とする、無作為化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験「Citalopram for Agitation in Alzheimer Disease Study(CitAD)」を行った。試験には副次目的としてシタロプラムの、「機能」「介護者負担」「安全性」「認知機能的安全性」「忍容性」をキーとした各影響を調べることも含まれた。

 CitAD試験には、2009年8月~2013年1月に米国とカナダの8つの大学病院から、アルツハイマー病とみなされ臨床的に焦燥性興奮がみられた186例の患者が登録。被験者は、心理社会的介入+シタロプラムを受ける群(94例)またはプラセボを受ける群(92例)に割り付けられ、9週間治療を受けた。シタロプラムの投薬量は開始時10mg/日から、治療反応と忍容性に基づき3週間で30mg/日まで増量された。

 主要評価項目は、18点評価のNeurobehavioral Rating Scale agitation subscale(NBRS-A)および修正版Alzheimer Disease Cooperative Study-Clinical Global Impression of Change(mADCS-CGIC)のスコア評価であった。その他のアウトカムとして、Cohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)、Neuropsychiatric Inventory(NPI)のスコア、日常生活動作(ADL)、介護者負担、認知機能安全性(MMSEの30点評価による)、有害事象についても評価した。

焦燥性興奮と介護者負担は有意に軽減、しかし認知機能と心臓に有意な有害作用も
 被験者は、平均年齢78~79歳、女性46%、89%が地域居住者で、直近5年間に認知症と診断された患者であった。

 両群とも90%超が9週間の治療を完了した。またシタロプラム群で投薬量30mg/日を受けた被験者は78%、20mg/日は15%だった。

 結果、NBRS-AとmADCS-CGICいずれのスコアも、シタロプラム群がプラセボ群と比べて有意な改善を示した。9週時点でのNBRS-Aスコアの推定両群差は-0.93(95%信頼区間[CI]:-1.80~-0.06、p=0.04)だった。mADCS-CGICによる評価では、シタロプラム群はベースライン時から40%の中等度~顕著な改善を示した。プラセボ群は同26%で、シタロプラムの推定治療効果(特定CGIC項目の改善オッズ比[OR])は2.13倍(95%CI:1.23~3.69、p=0.01)とされた。

 シタロプラム群は、CMAIと総NPIのスコア、介護者負担も有意に改善したが、NPIサブスケールの焦燥性興奮、ADLの改善、またロラゼパム(商品名:ワイパックスほか)の緊急投与の低減については有意差はみられなかった。

 さらに、シタロプラム群では、認知機能の悪化が有意で(-1.05点、95%CI:-1.97~-0.13、p=0.03)、QT間隔延長が有意であった(18.1ms、95%CI:6.1~30.1、p=0.01)。

 著者は、「アルツハイマー病とみられる焦燥性興奮のある患者において、心理社会的介入に加えてシタロプラム治療を行うことは、プラセボとの比較で焦燥性興奮と介護者負担を有意に軽減した。ただし、認知機能および心臓への副作用から投与量は30mg/日が限度であると思われる」とまとめている。