プロテインキナーゼA(PKA)の触媒サブユニットの遺伝子変異が、両側性副腎過形成や片側性コルチゾール分泌副腎皮質腺腫に関与していることが、ドイツ・ヴュルツブルク大学のFelix Beuschlein氏らが行った検討により判明した。副腎皮質の腫瘍や過形成は、コルチコトロピン非依存性のクッシング症候群を引き起こす。しかし、その分子学的発生機序は解明されていなかった。NEJM誌オンライン版2014年2月26日号掲載の報告より。
エクソーム配列解析で変異を特定
研究グループは、コルチゾール産生副腎腺腫10例の主要組織標本について、エクソーム配列解析を行い変異を特定し、副腎腫瘍171例の遺伝子について同変異の有無を分析した。また、コルチゾール分泌両側性副腎過形成の患者35人については、全ゲノムコピー数解析を行った。
そのうえで、遺伝子異常が、臨床的、または生体外で及ぼす影響について分析した。
PRKACA体細胞変異は片側性コルチゾール分泌副腎皮質腺腫の原因に
エクソーム配列解析の結果、PKAの触媒サブユニットをコードしている
PRKACAの体細胞突然変異が、10例中8例に検出された。
顕性クッシング症候群の患者59例中22例(37%)で、片側性腺腫に
PRKACA体細胞突然変異が見つかった。一方、同変異は潜在性副腎皮質ホルモン過剰症の40例や、その他の副腎腫瘍の認められる82例については、検出されなかった。
コルチゾール分泌副腎過形成の患者35例では、
PRKACAを含む第19染色体のゲノム領域の生殖細胞系の重複が認められた。
これらの所見を踏まえて研究グループは、PKAの触媒サブユニットの遺伝子変異は、ヒトの疾患に関連しており、生殖細胞系の重複は両側性副腎過形成の、
PRKACAの体細胞変異は片側性コルチゾール分泌副腎皮質腺腫に関連していると結論づけた。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)