ゾタロリムス溶出ステントとシロリムス溶出ステントを直接比較した多施設共同オープン無作為化試験SORT OUT IIIの1年時点と5年時点の臨床転帰を検証した結果、1年時点ではシロリムスの優越性が有意であったが、5年時点ではシロリムスの優越性が失われていたことが判明した。薬剤溶出ステントの直接比較試験では、主要エンドポイントの評価は伝統的に9~12ヵ月時点で行われてきたが、この時期での評価が最適なのかについては不明なままであった。デンマーク・オーフス大学病院のMichael Maeng氏らによる報告で、Lancet誌オンライン版2014年3月13日号で発表された。
ゾタロリムスvs. シロリムス試験、最長5年追跡
SORT OUT III試験は、2種類の異なる薬剤溶出ステントを留置した患者の臨床転帰について評価することを目的に、デンマーク国内5ヵ所の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)センターで行われた。18歳以上の症候性適格患者2,332例が無作為に2群に割り付けられ、ゾタロリムス溶出エンデバースプリントステント(米国メドトロニック社製)もしくはシロリムス溶出サイファーセレクトプラスステント(米国コーディス ジョンソン&ジョンソン社製)の留置を受けた。
同試験の主要エンドポイントは、9ヵ月時点の主要重大心イベント(心臓死、心筋梗塞、標的血管再血行再建術の複合)であった。
今回の検討では、最長5年間フォローアップし、エンドポイントとして主要重大心イベントとステント血栓症の発生を含め評価した。分析は、intention to treatにて行った。
1年時点まではシロリムスが優位だが、1~5年に逆転
被験者は、ゾタロリムス溶出ステント群1,162例、シロリムス溶出ステント群1,170例だった。
結果、追跡5年時点の主要重大心イベントの発生率は、両群間で同程度であった。ゾタロリムス群17.0%(197/1,162例)、シロリムス群15.6%(182/1,170例)で、オッズ比(OR)1.10(95%信頼区間[CI]:0.88~1.37、p=0.40)だった。
この所見の背景には、1年時点ではゾタロリムス群が有意に高率であったが(OR:2.13、95%CI:1.48~3.07、p<0.0001)、1~5年の間の発生が逆転しシロリムス群で発生が有意に高率となっていたことがあった(OR:0.78、95%CI:0.59~1.02、p=0.071)。
ステント血栓症も1年時点では、ゾタロリムス群の発生頻度が有意に高かったが(OR:3.34、95%CI:1.08~10.3、p=0.036)、1~5年の間の発生が逆転していた(OR:0.05、95%CI:0.01~0.36、p=0.003)。標的血管再血行再建術は、1~5年の間に、ゾタロリムス群30%(26/88例)であったのに対しシロリムス群は77%(54/70例)となっていた。
これらの結果を踏まえて著者は、「薬剤溶出ステント留置患者の5年転帰を、伝統的に行われている1年時点の主要エンドポイント評価で予測するには不十分と思われる」とまとめている。