乳がん術後リンパ節転移への放射線療法、効果が明確に/Lancet

乳房切除術および腋窩郭清後の放射線療法の効果について、1~3個のリンパ節転移があり全身治療が行われた場合でも、再発率、乳がん死亡率を低下することが明らかにされた。英国・オックスフォード大学のEarly Breast Cancer Trialists 共同研究グループ(EBCTCG)が22試験、8,135例の患者データをメタ解析し報告した。先行研究のメタ解析で、乳がん切除後の放射線療法は、リンパ節転移が認められる全女性について、再発および乳がん死亡の両リスクを低下することが示されていた。しかし、転移が1~3個と少ない患者におけるベネフィットは不明であり、本検討は、それらの患者の放射線治療の効果について評価することが目的であった。Lancet誌オンライン版2014年3月19日号掲載の報告より。
22試験8,135例のデータをメタ解析
メタ解析には、1964~1986年に行われた無作為化試験22試験に参加した8,135例の患者個人データが含まれた。乳房切除術および腋窩郭清後に胸壁と局所リンパ節に放射線療法を受けたか、もしくは同術後に放射線療法を受けていなかった者が対象である。再発は10年間死亡は20年間または2009年1月1日時点まで追跡し、参加試験、個々の追跡年、試験開始時年齢、リンパ節の病理所見で層別解析した。
対象患者のうち3,786例がレベルII以上の腋窩郭清を行い、リンパ節転移がゼロ、1~3個または4個以上を有する集団に分けて分析した。
1~3個の転移でも局所再発、全再発、乳がん死亡を有意に抑制
結果、腋窩郭清を受けリンパ節転移がなかった700例については、放射線療法は局所再発(両者の有意水準[2p]>0.1)、全再発(放射線療法群vs. 非療法群のリスク比[RR]:1.06、95%信頼区間[CI]:0.76~1.48、2p>0.1)、乳がん死亡(同:1.18、0.89~1.55、2p>0.1)に統計学的に有意な影響を及ぼさなかった。腋窩解剖郭清を受けリンパ節転移が1~3個であった1,314例では、放射線療法は局所再発(2p<0.00001)、全再発(RR:0.68、95%CI:0.57~0.82、2p=0.00006)、乳がん死亡(同:0.80、0.67~0.95、2p=0.01)を抑制した。これら1,314例のうち1,133例が全身治療(シクロホスファミド、メトトレキサート、フルオロウラシルまたはタモキシフェン)を試験中に受けており、これらの症例でも局所再発(2p<0.00001)、全再発(RR:0.67、95%CI:0.55~0.82、2p=0.00009)、乳がん死亡(同:0.78、0.64~0.94、2p=0.01)を抑制した。
腋窩郭清を受けリンパ節転移が4個以上だった1,772例でも、放射線療法は局所再発(2p<0.00001)、全再発(RR:0.79、95%CI:0.69~0.90、2p=0.0003)、乳がん死亡(同:0.87、0.77~0.99、2p=0.04)の抑制がみられた。
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参考になるメタ解析~乳がん術後リンパ節転移への放射線療法(コメンテーター:藤原 康弘 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(202)より-
コメンテーター : 藤原 康弘( ふじわら やすひろ ) 氏
国立研究開発法人 国立がん研究センター企画戦略局長 同 中央病院 乳腺・腫瘍内科
J-CLEAR推薦コメンテーター