特発性肺線維症患者においてニンテダニブ(BIBF 1120)は、努力性肺活量(FVC)の低下を有意に抑制することが、英国・サウサンプトン大学病院のLuca Richeldi氏らが行った2件の再現性無作為化二重盲検第III相試験(INPULSIS-1、INPULSIS-2)の結果、報告された。同低下の抑制は、疾患進行抑制と一致していることも示された。安全性に関しては、下痢と関連する頻度が高かったが、試験薬の投与中止となった割合は5%未満であったという。ニンテダニブは複数のチロシンキナーゼを標的とする細胞内阻害薬で、第II相試験では、特発性肺線維症患者に対し150mgを1日2回投与が肺機能低下と急性増悪を抑制することが示されていた。NEJM誌2014年5月29日号(オンライン版2014年5月18日号)の掲載報告。
ニンテダニブ150mgの1日2回投与の有効性と安全性を対プラセボで調査
研究グループは、特発性肺線維症患者に対するニンテダニブ150mgの1日2回投与の有効性と安全性を調べるため、プラセボと比較する52週間の2試験(INPULSIS-1、INPULSIS-2)を行った。試験は24ヵ国205地点で被験者を募り行われた。
主要評価項目は、FVCの年間低下率だった。また主な副次評価項目として、急性増悪の初回発生までの期間、St George's 呼吸器質問票総スコアのベースライン時からの変化などの評価が行われた。
FVCの年間低下率が有意に抑制、急性増悪初回発生までも1試験で有意に延長
2試験で計1,066例が3対の2の割合で無作為化を受け、ニンテダニブまたはプラセボを投与された。
補正後FVCの年間低下率は、INPULSIS-1ではニンテダニブ群(309例)は-114.7mL、プラセボ群(204例)は-239.9mLで、両群差は125.3mL/年(95%信頼区間[CI]:77.7~172.8、p<0.001)だった。またINPULSIS-2でも、ニンテダニブ群(329例)は-113.6mL、プラセボ群(219例)は-207.3mLで、両群差は93.7mL/年(同:44.8~142.7、p<0.001)とニンテダニブ群の有意な低下抑制が認められた。
主な副次評価項目のうち、急性増悪の初回発生までの期間について、INPULSIS-1ではニンテダニブ群とプラセボ群との間に有意差は認められなかったが(ニンテダニブ群のハザード比:1.15、95%CI:0.54~2.42、p=0.67)、INPULSIS-2ではニンテダニブ群のベネフィットが有意であることが示された(同:0.38、0.19~0.77、p=0.005)。
ニンテダニブ群で最も頻度が高かった有害事象は下痢であった。発生率は、INPULSIS-1では61.5%、INPULSIS-2では63.2%で、プラセボ群は各試験で18.6%、18.3%だった。
(武藤まき:医療ライター)