心血管リスクは、低所得国が最も低く高所得国が最も高いにもかかわらず、実際の心血管イベント発生率や致死率は、高所得国が最低で低所得国が最高であることが明らかになった。背景として、高所得国では予防的薬物治療や血行再建術の実施率が高いことがあることも判明したという。カナダ・ハミルトン総合病院のSalim Yusuf氏らが行った17ヵ国、約16万人を対象とした検討の結果、判明した。NEJM誌2014年8月28日号掲載の報告より。
心血管イベントについて4.1年追跡
研究グループは、17ヵ国の都市部・農村部628ヵ所に住む合計15万6,424人の、心血管リスクを評価した。評価には、臨床試験なしでリスク因子を評価できる信頼性の高い「INTERHEART」リスクスコアを用いた。
調査対象とした17ヵ国のうち、高所得国は3ヵ国(カナダ、スウェーデン、アラブ首長国連邦)、中所得国は10ヵ国(アルゼンチン、ブラジル、チリ、中国、コロンビア、イラン、マレーシア、ポーランド、南アフリカ共和国、トルコ)、低所得国は4ヵ国(バングラデシュ、インド、パキスタン、ジンバブエ)だった。
心血管疾患の発症と死亡について、平均4.1年追跡した。
イベント発生率、致死率ともに高所得国が最低
その結果、INTERHEARTリスクスコアの平均値が最も高かったのは高所得国で、最も低かったのは低所得国、中間が中所得国だった(p<0.001)。
一方、心血管死、心筋梗塞、脳卒中、心不全の主要心血管イベントの発生率についてみると、高所得国は3.99件/1,000人年で、中所得国の5.38件/1,000人年、低所得国の6.43件/1,000人年に比べ、有意に低かった(p<0.001)。
致死率についても、高所得国は6.5%で、中所得国15.9%、低所得国17.3%に比べ有意に低率だった(p=0.01)。
都市部と農村部の比較では、都市部に住民のほうがリスクは高かったものの、心血管イベント発生率は、農村部6.25件/1,000人年に対し都市部が4.83件/1,000人年であり、致死率は17.25%に対し13.52%と、いずれも都市部で低率だった(いずれもp<0.001)。
また、抗血小板薬やβ遮断薬といった予防的な薬の服用率と血行再建術の実施率が、高所得国が中所得国や低所得国に比べ有意に高かった(p<0.001)。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)