50~69歳の若年者大動脈弁置換における弁の選択は、生体弁のほうが機械弁よりも妥当(reasonable)な選択肢であることが明らかにされた。米国・マウントサイナイ医療センターのYuting P. Chiang氏らが、患者4,253例について後ろ向きコホート分析を行った結果、15年生存および脳卒中について両群間で有意差は認められなかった。生体弁患者のほうが再手術を受ける可能性が大きかったが、大出血を起こす可能性は低かったという。若年者大動脈弁置換における弁の選択は、長期生存や重大疾患の発生について明らかになっておらず、論争の的となっていた。JAMA誌2014年10月1日号掲載の報告より。
50~69歳術後患者4,253例の生存や脳卒中発生などを後ろ向きに分析
分析は、Statewide Planning and Research Cooperative Systemで被験者を特定し、1997~2004年にニューヨーク州で生体弁もしくは機械弁による大動脈弁置換手術を受けた50~69歳の患者4,253例を対象に行われた。
追跡期間中央値は10.8年(範囲:0~16.9年)だった(死亡に関する最終フォローアップは2013年11月30日)。
傾向マッチング法で1,001組の患者ペアを作成し、分析を実施。主要アウトカムは、全死因死亡とし、副次アウトカムは脳卒中、再手術、大出血の発生などだった。
生存、脳卒中発生に有意差はないが、妥当な選択肢は生体弁
生体弁置換を受けた患者は1,466例(34.5%)、機械弁は2,787例(65.5%)だった。
結果、両群患者間で、生存または脳卒中発生率について有意差は認められなかった。
15年生存率は、生体弁群60.6%(95%信頼区間[CI]:56.3~64.9%)、機械弁群62.1%(同:58.2~66.0%)だった(ハザード比[HR]:0.97、95%CI:0.83~1.14)。
15年脳卒中累積発生率は、それぞれ7.7%(95%CI:5.7~9.7%)、8.6%(同:6.2~11.0%)だった(HR:1.04、95%CI:0.75~1.43)。
15年再手術累積発生率は生体弁群が有意に高率だった(12.1%vs. 6.9%、HR:0.52、p=0.001)。一方、15年大出血累積発生率は、機械弁群が有意に高率であった(6.6%vs. 13.0%、HR:1.75、p=0.001)。
30日死亡率は、脳卒中後18.7%、再手術後9.0%、大出血後13.2%だった。
以上から著者は「若年患者では、生体弁が妥当な選択肢であることを示唆するものであった」とまとめている。
(武藤まき:医療ライター)