コレステロール流出能と心血管イベントは逆相関/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2014/12/08

 

 アテローム硬化性心血管疾患の新たなバイオマーカーとして、コレステロール流出能(cholesterol efflux capacity)が有望であることが、米国・テキサス大学サウスウェスタンメディカルセンターのAnand Rohatgi氏らによる検討の結果、明らかにされた。一般健康集団(心血管疾患のない)を対象とした検討において、コレステロール流出能とイベント発生が逆相関の関連性を有することが示され、同関連性は伝統的な心血管リスク因子、HDLコレステロール(HDL-C)値、HDL粒子数で補正後も維持されたことが示された。NEJM誌オンライン版2014年11月18日号掲載の報告より。

コレステロール流出能とアテローム硬化性心血管疾患発生との関連を調査
 HDL-C値がアテローム硬化性心血管疾患の原因と関連しているかどうかは明らかではなく、先行研究において、HDLコレステロール流出能(マクロファージからコレステロールを受け入れるHDL能でコレステロール排出におけるキーステップ)が、より重要な因子である可能性が示唆されていた。

 研究グループは、大規模な多民族集団において、コレステロール流出能の疫学調査を行うとともに、アテローム硬化性心血管疾患発生との関連を調べた。

 対象は、Dallas Heart Studyの被験者で心血管疾患のない2,924例。ベースラインでHDL-C値、HDL粒子数、コレステロール流出能を測定し追跡調査を行った。

 主要エンドポイントは、アテローム硬化性心血管疾患(初発の非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、冠動脈再建術、心血管系による死亡で定義)とした。追跡期間中央値は9.4年であった。

コレステロール流出能最高四分位範囲1.19~3.93群ではリスクが67%低い
 被験者のベースライン時特性は、年齢は42歳、女性は57%であった。コレステロール流出能は0.21~3.93にわたり、4分位(0.21~0.83、0.84~0.99、1.00~1.18、1.19~3.93)に層別化して分析が行われた。

 分析の結果、HDL-C値が複数の伝統的なリスク因子や代謝変数と関連していたのに対し、コレステロール流出能は、それらとはわずかな関連性しか示さなかった。

 ベースライン時のHDL-C値は、心血管イベントとの関連が認められなかった(補正後分析におけるハザード比[HR]:1.08、95%信頼区間[CI]:0.59~1.99)。

 一方、伝統的リスク因子、HDL-C値、HDL粒子数を含む完全補正後モデルにおいて、コレステロール流出能最高四分位範囲群は同最低四分位範囲群と比べて心血管リスクが67%低かった(HR:0.33、95%CI:0.19~0.55)。

 コレステロール流出能を伝統的リスク因子に加えることで、統合識別改善指数や再分類指数は改善が示された。

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コメンテーター : 興梠 貴英( こうろ たかひで ) 氏

自治医科大学附属病院 医療情報部 部長

J-CLEAR評議員