高感度心筋トロポニンI検査で男女別の診断閾値を設定することで、女性の心筋梗塞診断率が倍増し、心筋梗塞再発や死亡リスクの高いグループを特定できることが判明した。英国・エディンバラ大学のAnoop S. V. Shah氏らが、急性冠症候群疑いの患者1,126例について行った前向きコホート試験の結果、報告した。これまでの研究から、男女同一の診断閾値の採用が、女性の心筋梗塞の過少診断につながり、治療やアウトカムの性差を引き起こす可能性が指摘されていた。BMJ誌オンライン版2015年1月21日号掲載の報告より。
男女別の診断基準に基づき、2人の専門医が診断
研究グループは2012年8月に、エディンバラ王立病院で急性冠症候群の疑いがあると診断された患者1,126例について前向きコホート試験を行った。被験者には高感度トロポニンI検査を行い、診断閾値を男性は34ng/L、女性は16ng/Lとそれぞれ設定し、それに基づき2人の循環器専門医が心筋梗塞の診断を行った。
被験者の平均年齢は66歳で、うち46%が女性だった。
診断結果について、従来の心筋トロポニンI検査と性別を問わない診断基準50ng/Lを用いた場合とを比較した。
女性の心筋梗塞診断率は11%から22%へ増加
その結果、高感度トロポニンI検査結果と男女別の診断閾値を用いた場合、女性の心筋梗塞診断率は22%と、従来の診断基準の場合の11%に比べ、大幅に増加した(p<0.001)。一方男性については、診断率は19%から21%へのわずかな増加に留まった(p=0.002)。
また、女性のほうが男性よりも、循環器専門医へ紹介されたり、冠動脈再建術を受けることが有意に少なかった(いずれもp<0.05)
トロポニン濃度が17~49ng/Lだった女性と50ng/L以上だった女性の、12ヵ月時点における死亡または心筋梗塞再発の発生率は、それぞれ25%と24%であった。これは16ng/L以下だった女性の同発生率4%に比べ、大幅に高率だった(p<0.001)。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)