ダビガトラン(商品名:プラザキサ)やリバーロキサバン(同:イグザレルト)は、ワルファリンに比べ、心房細動の有無にかかわらず、消化管出血リスクを増大しないことが示された。ただし76歳以上の高齢者の場合には、ダビガトランでは心房細動患者について、リバーロキサバンは心房細動の有無にかかわらず、ワルファリンに比べ消化管出血リスクを増大することが示されたという。米国・メイヨークリニックのNeena S. Abraham氏らが、9万例超を対象に行った後ろ向き傾向スコア適合コホート試験で明らかにした。新規経口抗凝固薬の消化管出血リスク増大のエビデンスの大半は、追跡期間や試験への包含基準により限定的なものであった。また観察研究では、相反する結果も示されていた。BMJ誌オンライン版2015年4月24日号掲載の報告より。
約3年間の保険支払いデータを基に分析
研究グループは、米国の民間保険とメディケア加入者のデータベースを基に、2010年11月1日~2013年9月30日にかけて、ダビガトラン、リバーロキサバン、ワルファリンの新規服用者を対象に試験を行い、ダビガトランとリバーロキサバン服用者の消化管出血リスクを、ワルファリン服用の場合と比較した。
被験者総数は9万2,816例で、ダビガトラン服用者は8,578例、リバーロキサバンは1万6,253例、ワルファリンは6万7,985例だった。
76歳以上心房細動患者、ダビガトランで2.5倍、リバーロキサバンで2.9倍
結果、心房細動患者でダビガトランに関連した消化管出血の発生率は、2.29/100患者年(95%信頼区間[CI]:1.88~2.79)に対し、ワルファリンでは2.87/100患者年(同:2.41~3.41)だった。非心房細動患者の同発生率はそれぞれ、4.10/100患者年(同:2.47~6.80)、3.71/100患者年(同:2.16~6.40)だった。リバーロキサバンに関連した消化管出血の発生率は、心房細動患者が2.84/100患者年(同:2.30~3.52)で、非心房細動患者が1.66/100患者年(同:1.23~2.24)だった。
傾向スコア適合モデルで分析の結果、心房細動患者における消化管出血リスクは、ダビガトランのワルファリンに対するハザード比は0.79(95%CI:0.61~1.03)、リバーロキサバンのワルファリンに対するハザード比は0.93(同:0.69~1.25)で同等だった。また、非心房細動患者についても、同ハザード比はそれぞれ、1.14(同:0.54~2.39)、0.89(同:0.60~1.32)で同等だった。
一方、消化管出血リスクは65歳以上で増加し、76歳以上では、心房細動患者でダビガトラン服用者は、ワルファリン服用者に比べ出血に関するハザード比が2.49(同:1.61~3.83)と有意に増大した。リバーロキサバンも、心房細動患者で同ハザード比は2.91(同:1.65~4.81)、非心房細動患者で4.58(同:2.40~8.72)と、いずれも増大した。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)