慢性閉塞性肺疾患(COPD)の発症には、成人早期における1秒量(FEV1)の低下が重要であり、加速度的なFEV1の減少は必須の特性ではないことが、デンマーク・コペンハーゲン大学のPeter Lange氏らの検討で示された。COPDは、従来、加齢に伴い肺機能が急速に低下することで発症すると考えられてきた。しかし、観察研究などでは、とくに気流制限が最も重篤なCOPD患者において、FEV1にばらつきがみられたり、低下の程度が予想よりも小さい場合があることが報告されていた。NEJM誌2015年7月9日号掲載の報告より。
3つのコホート研究のデータを成人早期のFEV1で層別化
研究グループは、FEV
1の低下率が正常範囲内であっても、成人早期の最大肺機能が正常よりも低下していれば、加齢に伴いCOPDを発症する可能性があるとの仮説を前向きに検証した(GlaxoSmithKline社などの助成による)。
3つの別個のコホート研究(フラミンガム子孫コホート[FOC]、コペンハーゲン市心臓研究[CCHS]、ラブレース喫煙者コホート[LSC])の参加者のデータを用いた。
登録開始時のFEV
1予測値(80%以上、80%未満)と、最終受診時のCOPDの有無で層別化し、FEV
1の経時的な低下率を評価した。
LSCの参加者(1,553例、平均年齢56±9歳、男性22%)は、FOC(1,622例、33±4歳、47%)やCCHS(1,242例、33±5歳、47%)の参加者よりも20歳以上年長であった。このうち最終受診時にCOPDを発症していたのは495人(LSC:163例、FOC:187例、CCHS:145例)だった。
COPDの約半数はFEV1の低下速度が正常
平均観察期間22年の時点で、40歳以前のFEV
1が予測値の80%未満であった657例のうち、174例(26%)がCOPDを発症したのに対し、80%以上であった2,207例のうちCOPDを発症したのは158例(7%)であり、成人早期にFEV
1低値の集団のほうがリスクが高かった(p<0.001)。
観察期間終了時に、GOLD診断基準のGrade 2以上のCOPDを発症していた332例のうち、158例(48%)は40歳以前のFEV
1が正常で、これはベースライン時にFEV
1が正常であった集団の7%に相当した。その後、これらの集団のFEV
1は、平均53±21mL/年の速度で急速に低下した。
COPDを発症した残りの174例(52%)は、40歳以前のFEV
1が正常よりも低く、喫煙曝露は同程度であったにもかかわらず、その後のFEV
1の低下率は平均27±18mL/年であり、FEV
1正常集団よりも緩徐であった(p<0.001)。
これらの知見は、COPDの発症には成人早期のFEV
1低値が重要で、FEV
1の急速な低下は必須の特性ではないことを示唆する。
著者は、「COPD患者の約半数は、FEV
1の低下速度が正常で、成人早期のFEV
1が低いことがわかった。成人早期の肺機能が、その後のCOPDの診断において重要である」としている。
(菅野守:医学ライター)