アロマターゼ阻害薬術後療法での乳がん死抑制効果~TAMとの比較/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2015/08/12

 

 閉経後早期乳がんの術後ホルモン療法において、アロマターゼ阻害薬(アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール)はタモキシフェン(TAM)に比べ、再発や乳がん死の抑制効果が高いことが、Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG)の検討で明らかとなった。閉経後早期乳がんの治療では、アロマターゼ阻害薬の5年投与またはTAM 2~3年投与後のアロマターゼ阻害薬2~3年投与は、TAM 5年投与よりも再発率が低いことが示されているが、乳がん死への影響などはいまだに不明だという。Lancet誌2015年7月23日掲載の報告。

アロマターゼ阻害薬とタモキシフェンの5つの組み合わせの比較試験のメタ解析

 研究グループは、閉経後のエストロゲン受容体(ER)陽性早期乳がんの治療において、アロマターゼ阻害薬とTAMを比較した無作為化試験(2005年までに開始された試験)の個々の患者データを用いたメタ解析を行った(Cancer Research UKなどの助成による)。

 解析の対象は、次の5つの組み合わせを比較した無作為化試験であった。(1)アロマターゼ阻害薬5年投与とTAM 5年投与、(2)アロマターゼ阻害薬5年投与とTAM 2~3年投与後にアロマターゼ阻害薬に切り換えて5年まで投与、(3)TAM 2~3年投与後にアロマターゼ阻害薬に切り換えて5年まで投与とTAM 5年投与、(4)アロマターゼ阻害薬5年投与とアロマターゼ阻害薬2年投与後にTAMに切り換えて5年まで投与、(5)アロマターゼ阻害薬2年投与後にTAMに切り換えて5年まで投与とTAM 5年投与。

 主要評価項目は、乳がんの再発(遠位、局所、対側乳房)、乳がん死、無再発死亡、全死因死亡とした。intention-to-treat解析を行い、有効性の評価にはlog-rank検定を用いた。初回イベント発生の率比(RR)およびその95%信頼区間(CI)を算出した。

 9試験に参加した閉経後ER陽性早期乳がん患者3万1,920例について解析を行った。

アロマターゼ阻害薬 5年投与、非施行に比べ10年乳がん死を約40%抑制

 アロマターゼ阻害薬5年投与とTAM 5年投与の比較では、乳がん再発率は治療開始から1年まで(RR:0.64、95%CI:0·52~0.78)および2~4年(同:0.80、0.68~0.93)はアロマターゼ阻害薬が有意に良好であったが、5年以降は有意な差はなくなった。また、10年乳がん死亡率は、アロマターゼ阻害薬がTAMよりも有意に低かった(12.1 vs.14.2%、RR:0.85、95%CI:0.75~0.96、2p=0.009)。

 アロマターゼ阻害薬5年投与とTAM 2~3年投与後にアロマターゼ阻害薬に切り換えて5年まで投与の比較では、乳がん再発率は治療開始から1年まではアロマターゼ阻害薬で有意に良好であった(RR:0.74、95%CI:0.62~0.89)が、2~4年および5年以降は有意な差はなくなった。全体としては、アロマターゼ阻害薬5年投与は、TAMからアロマターゼ阻害薬への切り換えよりも乳がん再発率が低かった(同:0.90、0.81~0.99、2p=0.045)が、乳がん死には有意な差はなかった(同:0.89、0.78~1.03、2p=0.11)。

 TAM 2~3年投与後にアロマターゼ阻害薬に切り換えて5年まで投与とTAM 5年投与の比較では、乳がん再発率は、2~4年はアロマターゼ阻害薬への切り換えが有意に良好であった(同:0.56、0.46~0.67)が、その後この差は消失した。10年乳がん死亡率は、アロマターゼ阻害薬への切り換えがTAM 5年投与よりも低かった(8.7 vs.10.1%、2p=0.015)。

 これら3つのタイプの比較を統合すると、乳がん再発率は異なる薬剤による治療期間中はアロマターゼ阻害薬が良好で(RR:0.70、95%CI:0.64~0.77)、その後この差は有意ではなくなった(同:0.93、0.86~1.01、2p=0.08)。

 また、乳がん死は、異なる薬剤での治療期間(同:0.79、0.67~0.92)、その後の期間(同:0.89、0.81~0.99)、および全期間を通じて(同:0.86、0.80~0.94、2p=0.0005)、アロマターゼ阻害薬の抑制効果が優れていた。全死因死亡についてもアロマターゼ阻害薬の効果が高かった(同:0.88、0.82~0.94、2p=0.0003)。

 年齢、BMI、Stage、Grade、プロゲステロン受容体の状態、HER2の状態で補正しても、これらのRRはほとんど変化しなかった。

 著者は、「アロマターゼ阻害薬は、異なる薬剤による治療が行われている期間は、TAMに比べ乳がんの再発を約30%抑制したが、それ以降は有意な差はなかった。アロマターゼ阻害薬5年投与は、10年乳がん死亡率をTAM 5年投与よりも約15%低下させ、ホルモン療法を施行しない場合に比べると約40%抑制した」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 矢形 寛( やがた ひろし ) 氏

埼玉医科大学 総合医療センター ブレストケア科 教授