ネットによる手洗い行動介入は気道感染症の抑制に有効/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2015/08/27

 

 インターネットを利用して手洗い行動を促す介入法は、気道感染症の拡大の抑制に有効であることが、英国・サウサンプトン大学のPaul Little氏が実施したPRIMIT試験で示された。手洗いは、気道感染症の拡大予防に広く支持され、とくに新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスのパンデミック(pandemic)の際には世界保健機関(WHO)が推奨した。一方、主な感染経路は飛沫とする見解があるなど、手洗いの役割については議論があり、また非貧困地域の成人に関する質の高い無作為化試験のエビデンスはこれまでなかったという。さらに、パンデミックのリスクの増大に伴い、迅速に利用できる低コストの介入法が求められている。Lancet誌オンライン版2015年8月6日号掲載の報告。

プライマリケアでのネット介入の効果を検証
 PRIMIT試験は、プライマリケアにおいて、手洗い行動へのインターネットを用いた介入(https://www.lifeguideonline.org/player/play/primitdemo)による気道感染症の拡大の抑制効果を評価するオープンラベルの無作為化試験(英国Medical Research Councilの助成による)。

 対象は、年齢18歳以上、1人以上の同居者がいる者とし、英国の一般医(GP)の患者リストから無作為に選んで、インフルエンザの感染拡大を防止する試験への参加を呼びかける書面を郵送した。被験者は、ウェブベースの介入を受ける群(介入群)またはこれを受けない群(対照群)に無作為に割り付けられた。

 ウェブベースのセッションは週1回、合計4回行われ、内容は毎回更新された。セッションでは、インフルエンザの重要性や手洗いの役割に関する情報が提供された。また、手洗いの意欲を最大化する計画を立て、手洗い行動を管理し、個々の参加者に合わせたフィードバックを行うなどの介入が行われた。

 主要評価項目は16週のフォローアップを完了した集団における気道感染症のエピソードであった。

感染率:51 vs.59%、パンデミック期にも有効な可能性
 2011年1月17日~2013年3月31日までに、英国内各地域344ヵ所のGP施設に2万66例が登録され、介入群に1万40例、対照群に1万26例が割り付けられた。このうち1万6,908例(84%、介入群8,241例、対照群8,667例)が16週のフォローアップを完了した。

 16週時に、介入群の51%(4,242例)が1回以上の気道感染症のエピソードを報告したのに対し、対照群は59%(5,135例)であり、介入による有意な感染抑制効果が認められた(多変量リスク比[mRR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.83~0.89、p<0.0001)。

 同居者の気道感染症エピソード(44 vs.49%、mRR:0.88、95%CI:0.85~0.92、p<0.0001)、インフルエンザ様疾患(6 vs.7%、0.80、0.72~0.92、p=0.001)、消化器感染症(21 vs.25%、0.82、0.76~0.88、p<0.0001)も、介入群で有意に抑制された。

 介入により、気道感染症は同居者への感染だけでなく同居者からの感染も抑制された。また、16週および1年後のプライマリケアにおける抗菌薬の使用、および気道感染症によるプライマリケアでのコンサルテーションや入院も、介入群で有意に改善された。

 試験期間中に両群2人ずつが感染症で入院した。ベースライン時に皮膚症状を認めなかった集団では、介入に伴い軽度の皮膚症状(自己申告)が増加した(4%[231/5,429例] vs.1%[79/6,087例]、p<0.0001)が、皮膚関連のコンサルテーションに影響はなかった。重篤な有害事象は報告されなかった。

 著者は、「気道感染症やインフルエンザ様疾患では手から口への感染が重要であり、非パンデミック期における手洗い行動の増加を目指した簡便なインターネットベースの行動介入は、急性気道感染症の抑制に有効であることが示された」とし、「パンデミック期には、より関心が高まり、情報を求めてインターネットへのアクセスが増加することを考慮すると、このような介入はパンデミック期にも効果的に実施可能と考えられる」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)

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コメンテーター : 小金丸 博( こがねまる ひろし ) 氏

東京都健康長寿医療センター 感染症内科専門部長

J-CLEAR推薦コメンテーター