外傷性脳損傷で頭蓋内圧亢進の認められる成人患者に対する低体温療法は、臨床転帰を悪化させる可能性があることが報告された。英国・ウェスタン総合病院のPeter J.D. Andrews氏らが、400例弱を対象に行った無作為化比較対照試験の結果、明らかにした。これまで、外傷性脳損傷における低体温療法は、頭蓋内圧亢進を低下することは知られていたが、機能的アウトカムへの有益性は不明であった。NEJM誌オンライン版2015年10月7日号掲載の報告。
6ヵ月後のGOS-Eスコアを比較
研究グループは2009年11月~14年10月にかけて、18ヵ国47ヵ所の医療機関を通じ、外傷性脳損傷の成人患者で、人工呼吸などの第1段階治療を行っても20mmHg超の頭蓋内圧亢進が認められた患者387例を対象とした。無作為に2群に割り付け、一方には低体温療法(32~35℃)と標準的治療を、もう一方の対照には標準的治療のみを行った。
対照群には、頭蓋内圧コントロールを目的に、必要に応じて高張液注射療法などの第2段階治療を行った。低体温療法群にも、低体温療法で頭蓋内圧コントロールが不能な場合に第2段階治療を行った。また、両群ともに第2段階治療によっても頭蓋内圧コントロールが不能の場合は、第3段階治療(バルビツレート療法、減圧開頭術)を実施した。
主要アウトカムは、6ヵ月後の拡張グラスゴー転帰尺度(Glasgow Outcome Scale:GOS-E、スコア範囲:1~8で低いほど機能的アウトカム悪化を示す)だった。
GOS-Eスコア良好の割合は対照群37%、低体温療法群26%
その結果、第3段階治療を要した人の割合は、対照群が54%に対し、低体温療法群が44%だった。
GOS-Eスコアのオッズ比は1.53(95%信頼区間:1.02~2.03、p=0.04)と、対照群に比べ低体温療法群のアウトカムのほうが悪いことが示された。
GOS-Eスコアが、5~8とアウトカムが良好だった人の割合も、対照群37%に対し、低体温療法群は26%と有意に低率だった(p=0.03)。
(當麻 あづさ:医療ジャーナリスト)