英国で、がんの疑いがある患者を緊急に専門医に紹介する制度「緊急紹介制度」(urgent referral pathway)を活用する一般診療所の患者は、あまり活用しない一般診療所の患者に比べ、がんの初診断・治療開始から4年以内の死亡率が低いことが明らかにされた。英国・ロンドン大学のHenrik Moller氏らが、コホート試験の結果、報告した。同緊急紹介制度は2000年代初めから始まったが、制度ががん患者の生存率に与えた影響については、これまで検討されていなかった。BMJ誌オンライン版2015年10月13日号掲載の報告。
英国の3つのデータベースを用い、がん患者約22万人について検討
研究グループは、英国の「Cancer Waiting Times」「NHS Exeter」「National Cancer Register」の3つのデータベースを用いて、2009~13年にがんの診断を受けた人、または初回治療を開始した人21万5,284例を対象にコホート試験を行った。試験対象となった一般診療所は8,049ヵ所だった。
診察を受けた診療所が、緊急紹介制度を活用する傾向と、死亡率との関連を分析した。
制度を活用しない診療所の患者、死亡のハザード比は1.07
4年間の追跡期間中に死亡した人は、9万1,620例だった。そのうち、診断を受けて1年以内の死亡は5万1,606例(56%)だった。
緊急紹介制度を利用する傾向を示す、標準化紹介率と検出率ともに、その傾向が強い診療所の患者は、傾向が強くない診療所の患者に比べ死亡率が低かった。標準化紹介率・検出率ともにそれぞれ、低率、中程度、高率と3群に分けた場合、両割合ともに高率だった診療所の患者数は全体の16%(3万4,758例)を占め、両率ともに中程度の群を基にした患者の死亡に関するハザード比は、0.96(95%信頼区間:0.94~0.99)だった。
一方、紹介制度の標準化紹介率・検出率どちらかが低率で、もう一方が高率ではない診療所の患者数は、全体の37%(7万9,416例)で、死亡に関するハザード比は1.07(同:1.05~1.08)だった。
(當麻 あづさ:医療ジャーナリスト)