院外心肺停止の成人に対し救急医療スタッフが心肺蘇生(CPR)を行う際、持続的胸部圧迫を行っても、断続的胸部圧迫を行った場合に比べて退院時の生存率や神経学的機能が良好である確率は増大しないことが示された。米国・ワシントン大学のGraham Nichol氏らが、救急医療(EMS)事業者を対象に行った無作為化試験で明らかにした。院外CPR時の断続的に行う徒手的心臓マッサージは、血流量および生存を低減する可能性があることから、研究グループは、胸部圧迫と陽圧換気を連続的に行ったCPRと、胸部圧迫を30回行い換気を2回行う間欠的なCPRの場合とでアウトカムが異なるかを調べた。NEJM誌オンライン版2015年11月9日号掲載の報告。
114のEMS事業者を対象に無作為化試験
検討は114のEMS事業者を対象に、クラスター無作為化クロスオーバー無作為化試験にて行われた。非外傷性心停止の成人で、救急医療スタッフがCPRを行った場合、持続的胸部圧迫が行われた群(介入群)と、断続的胸部圧迫が行われた群(対照群)に無作為化した。
主要アウトカムは、生存退院率だった。副次アウトカムは、修正Rankinスケールスコアによる神経学的機能(スコア0~6、3以下が神経学的機能良好)などだった。
在宅生存期間は介入群が0.2日減
被験者数は2万3,711例で、うち介入群は1万2,653例、対照群は1万1,058例だった。
データが入手可能だった被験者のうち、退院時に生存していたのは介入群9.0%(1,129/1万2,613例)、対照群9.7%(1,072/1万1,035例)で、両群間に有意差はなかった(群間差:-0.7ポイント、95%信頼区間[CI]:-1.5~0.1、p=0.07)。
退院時に神経学的機能が良好だった人の割合も、それぞれ7.0%、7.7%と有意差はなかった(同:-0.6ポイント、-1.4~0.1、p=0.09)。
なお在宅生存期間は、介入群が対照群に比べ有意に短かった(平均群間差:-0.2日、95%CI:-0.3~-0.1、p=0.004)。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)