プライマリケア診療でのLDLコレステロール(LDL-C)値コントロールに関して、目標値を達成した場合にプライマリケア医と患者の双方に対して金銭的成功報酬を与えると効果があることが示された。米国・ペンシルベニア大学のDavid A. Asch氏らが、医師340人と患者1,503人を対象に行った4群クラスター無作為化試験の結果で、医師のみ、または患者のみへの成功報酬では、成功報酬がない場合と比べて有意な差は示されなかったという。JAMA誌2015年11月10日号掲載の報告より。
医師340人、患者1,503人を対象に試験
研究グループは2011~14年にかけて、米国3ヵ所のプライマリケア診療所を対象に、12ヵ月間の検討を行った。被験者の患者は年齢18~80歳、10年フラミンガム・リスクスコアが20%以上、LDL-C値120mg超で冠動脈疾患歴あり、またはスコア10~20%でLDL-C値140mg/dL超の1,503例だった。
研究グループは、被験者のプライマリケア医340人を無作為に4つの群に分け、患者がLDL-C目標値を達成した場合に、(1)医師のみに患者1人当たり最大1,024ドルを(医師のみ成功報酬群)、(2)患者のみに最大1,024ドルを(患者のみ成功報酬群)、(3)医師と患者に分配報酬を(成功報酬分配群)、(4)アウトカム報酬は両者に与えないが患者のみに参加報酬を355ドル(対照群)、それぞれ与えた。
主要評価項目は、12ヵ月間のLDL-C値の変化量だった。
成功報酬分配群のLDL-C年間変化量、対照群との差は8.5mg/dL
結果、各群のベースラインから12ヵ月時点へのLDL-C値は、成功報酬分配群160.1mg/dLから126.4mg/dL、医師のみ群159.9mg/dLから132.0mg/dLへ、患者のみ群160.6mg/dLから135.5mg/dLへ、対照群161.5mg/dLから136.4mg/dLへ減少。それぞれの平均変化値は、成功報酬分配群33.6mg/dL(95%信頼区間[CI]:30.1~37.1)、医師のみ群27.9mg/dL(同:24.9~31.0)、患者のみ群25.1mg/dL(同:21.6~28.5)、対照群25.1mg/dL(同:21.7~28.5)で、いずれも有意な変化が認められた(4群ともp<0.001)。
対照群と比較してLDL-C低下の統計的有意差が認められたのは、成功報酬分配群のみで、その差は8.5mg/dL(95%CI:3.8~13.3、p=0.002)だった。
今回の結果について著者は、「低下の差はわずかで、成功報酬というやり方に価値があるのかどうか、さらなる検証が必要だ」と述べている。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)