大規模DNAシーケンス法により、メンデル遺伝病におけるまれであるが疾患リスクの高い変異型(レアバリアント)の存在が特定されたが、任意に抽出した患者集団での、関連臨床所見の発現頻度は明らかになっていない。米国・ヴァンダービルト大学医療センターのSara L. Van Driest氏らは、不整脈関連遺伝子変異の存在と、電子カルテ記録を用いて臨床所見の関連を調べた。その結果、病原性とされる変異遺伝子SCN5A、KCNH2と臨床所見との一致率は低く、任意抽出患者集団では病原性遺伝子と推定される変異型と異常臨床所見との関連を認めることができなかったという。遺伝子検査を受けた場合、既知のレアバリアントの存在は患者に知らせることとされているが、論争の的となっている。著者は「今回の所見は、患者への通知の意義について疑問符を呈するものであった」と報告している。JAMA誌2016年1月5日号掲載の報告。
非不整脈薬曝露患者2,022例を対象に変異遺伝子の存在と臨床所見の関連を調査
検討は後ろ向きコホート研究にて、非不整脈薬曝露患者2,022例を対象に行われた。被験者は2012年10月5日~13年9月30日に、米国大学医療センター7施設からElectronic Medical Records and Genomics Network Pharmacogenomicsプロジェクトとして集められた患者であった。
QT延長症候群およびブルガダ症候群の疾患原因遺伝子である
SCN5Aと
KCNH2の変異型について、3つのイオンチャネル専門ラボで評価し、またClinVarデータベースと比較し評価した。
臨床所見データは電子カルテ記録を参照し、2002年(いくつかの施設ではそれより早い時期から)~2014年9月10日までのデータを入手した。
主要評価項目は、不整脈またはECGの臨床所見(ICD-9コード、ECGデータで定義)で、手動レビューによる評価も行った。
変異キャリアの有無で臨床所見の有意な違い認められず
対象の2,022例は、年齢中央値61歳(IQR:56~65歳)、女性55%、白人74%であった。
結果、223例(試験コホートの11%)で、2つの不整脈感受性遺伝子における122個の、まれな(マイナー対立遺伝子頻度<0.5%)、非類似のスプライスバリアント(変異タンパク質)が特定された。
1つ以上のラボまたはClinVarで病原性の可能性があるとされたのは、被験者63例、42個の変異であった(Cohen k=0.26)。
不整脈の所見を示すICD-9コードが認められたのは、変異キャリア63例では11例(17%)、非キャリア1,959例では264例(13%)であった(差:+4%、95%信頼区間[CI]:-5~13%、p=0.35)。
ECGの記録のあった1,270例(全体の63%)で、補正QT間隔について、変異キャリア(中央値429ms)と非キャリア(同439ms)で有意差はみられなかった(差:-10ms、95%CI:-16~3ms、p=0.17)。
手動レビュー後の評価では、変異キャリアでECGまたは不整脈の所見がみられたのは63例のうち22例(35%)で、補正QT間隔が500ms超の患者は2例のみであった。