肥満外科手術を受ける患者は精神疾患を有する頻度が高く、なかでもうつ病は19%、過食性障害は17%と高いことが判明した。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のAaron J. Dawes氏らがメタ解析の結果、明らかにした。肥満外科手術を望む患者で精神疾患はよくみられるが、有病率や術後のアウトカムに与える影響については不明であった。JAMA誌2016年1月12日号掲載の報告。
約30年の文献を基にメタ解析
Dawes氏らは1988~2015年にかけて、MEDLINE、PsycINFOなどの文献データベースを基に、肥満外科手術前後の精神状態に関する報告を含む試験を特定しメタ解析を行った。
試験の質についてバイアス・リスク評価ツールで、また試験結果のエビデンスの質については、GRADE(Grading of Recommendations Assessment、Development and Evaluation)で評価した。
術前精神疾患と術後体重減の一貫した関連はなし
68件の発表論文を特定した。そのうち術前の精神状態の罹患率について報告したものは59件(被験者総数:6万5,363例)、術前の精神状態と術後アウトカムとの関連について報告したものは27件(同:5万182例)だった。
肥満外科手術を予定または実施した患者のうち、最も罹患率の高い精神疾患は、うつ病(19%、95%信頼区間:14~25)と過食性障害(17%、同:13~21)だった。
術前の精神疾患と、術後の体重減との関連については、一貫したエビデンスは得られなかった。また、うつ病も過食性障害も、術後体重減のアウトカムとの関連はなかった。
一方で肥満外科手術は、術後のうつ病罹患率低下(7試験、8~74%の減少)や、うつ症状の重症度(6試験、40~70%低減)と一貫した関連が認められた。著者は、「中等度のエビデンスだが、肥満外科手術と術後うつ病低下との関連が裏付けられた」とまとめている。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)