人工呼吸を要する重症の慢性閉塞性肺疾患(COPD)で代謝性アルカローシスが疑われる患者に対し、アセタゾラミドを用いても、侵襲的人工呼吸器管理期間の短縮効果は得られないことが示された。フランス・ジョルジュ・ポンピドゥー欧州病院のChristophe Faisy氏らが、382例を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果、報告した。人工呼吸器離脱時間やPaCO2経日変化についても、プラセボ群との有意差は認められなかったという。アセタゾラミドは数十年にわたり、COPDで代謝性アルカローシスを呈した患者に対し呼吸興奮薬として使用されている。しかし、これまでその効果を検証する大規模なプラセボ対照試験は行われていなかった。JAMA誌2016年2月2日号掲載の報告。
アセタゾラミドをICU入院48時間以内に開始
研究グループは2011年10月~14年7月にかけて、フランスの医療機関の集中治療室(ICU)に入室し、24時間超の人工呼吸器管理を要したCOPD患者382例を対象に試験を行った。
被験者を無作為に2群に分け、代謝性アルカローシスが疑われた際に、一方にはアセタゾラミド(500~1,000mg、1日2回)を、もう一方にはプラセボをそれぞれICU入室後48時間以内に開始し、同入室期間中最大28日間投与を続けた。
主要評価項目は、気管内挿管または気管切開による侵襲的人工呼吸器管理時間だった。副次評価項目は、動脈血ガスや呼吸パラメータの経日変化、離脱時間、有害事象、抜管後に非侵襲的人工呼吸器を使用、離脱の成功、ICU入室期間およびICU死亡率などだった。
離脱期間も両群で同等
試験を完了した380例の被験者(平均年齢69歳、男性71.6%、気管内挿管379例・99.7%)についてITT解析を行った。
人工呼吸器管理期間の中央値は、アセタゾラミド群(187例)が136.5時間で、プラセボ群(193例)が163時間だったものの両群間に有意差はなかった(群間差:-16.0、95%信頼区間[CI]:-36.5~4.0、p=0.17)。
同様に、人工呼吸器離脱時間の群間差(-0.9時間、-4.3~1.3、p=0.36)、分時換気量の経日変化の群間差(-0.0L/分、-0.2~0.2L/分、p=0.72)、PaCO
2経日変化の群間差(-0.3mmHg、-0.8~0.2mmHg、p=0.25)についても、有意な差は認められなかった。
一方、血清重炭酸塩の経日変化の群間差は-0.8mEq/L(95%CI:-1.2~-0.5mEq/L、p<0.001)、代謝性アルカローシスが認められた日数の群間差は-1(同:-2~-1、p<0.001)と、アセタゾラミド群で有意に減少した。
その他の副次評価項目については、群間の有意差はみられなかった。
著者は今回の結果について、「試験が統計的有意差を立証するには検出力不足であった可能性は否定できない」としたうえで、「管理期間の両群差(16時間)は臨床的に意味のある値だ」と結論している。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)