脳卒中後、中等度の上肢後遺症が認められた患者のリハビリテーションについて、課題指向型リハビリテーションプログラム(Accelerated Skill Acquisition Program:ASAP)がもたらす機能回復は、従来型作業療法(usual and customary care:UCC)と比べて同等もしくは低いことが、米国・南カリフォルニア大学のCarolee J. Winstein氏らが361例を対象に行った無作為化試験ICAREの結果、明らかにされた。これまで早期リハビリ完了後の期間を対象に行われた2件の大規模臨床試験において、強度・回数を増した課題指向型リハビリを行うことで通常ケアと比べて機能回復が良好であることが示されていた。今回、研究グループは外来患者を対象に試験を行ったが、結果を踏まえて著者は、「課題指向型リハビリの優越性を支持しないものであった」とまとめている。JAMA誌2016年2月9日号掲載の報告。
用量の異なる従来型作業療法とで比較
試験は単盲検にて、脳卒中後、運動機能に中等度の後遺症が認められた外来患者361例を対象に行われた。被験者は2009年6月~14年3月に7施設で1万1,051例についてスクリーニングを行って集められ、試験期間は44ヵ月間であった。
ASAPは基本原則に基づくプログラムで、機能障害にフォーカス、特異的課題、強度、必要度、自発性、患者中心などに留意し、1時間の介入を週3回10週間にわたって計30セッション行うというもの。
研究グループは被験者を、ASAPを行う群(119例)、ASAPと同量(30セッション)のUCCを行う群(DEUCC、120例)、UCCのモニタリングのみを行う群(UCC、122例)の3群に無作為に割り付け有効性を比較した。
主要アウトカムは、Wolf Motor Function Test(WMFT、平均15の上腕運動と手作業からなる)の時間スコアの12ヵ月間の変化(対数で評価)であった。副次アウトカムは、WMFT時間スコアの変化(臨床的に意義のある最小変化量[MCID]は19秒)、Stroke Impact Scale(SIS)上肢機能スコア(MCIDは17.8ポイント)が25ポイント以上改善した患者の割合などだった。
12ヵ月間のWMFT時間スコアの変化に有意差なし
無作為化を受けた被験者361例(平均年齢60.7歳、男性56%、アフリカ系米国人42%、脳卒中発症後平均46日)のうち、12ヵ月間の主要アウトカム評価を完了したのは304例(84%)であった(ASAP群106例、DEUCC群109例、UCC群100例)。
主要アウトカムのintention-to-treat解析(361例対象)の結果、各群の平均スコアの変化は、ASAP群が2.2から1.4への変化(差:0.82)、DEUCC群は2.0から1.2(差:0.84)、UCC群は2.1から1.4(差:0.75)で、有意な群間差はみられなかった(ASAP vs.DEUCCは0.14、95%信頼区間[CI]:-0.05~0.33、p=0.16/ASAP vs.UCC:-0.01、-0.22~0.21、p=0.94/DEUCC vs.UCC:-0.14、-0.32~0.05、p=0.15)。
副次アウトカムについても、ASAP群のWMFT時間スコアの変化が-8.8秒、SIS改善患者割合73%、DEUCC群はそれぞれ-8.1秒、72%、UCC群は-7.2秒、69%だった。ASAP vs.DEUCCのWMFT時間スコア差は1.8秒(95%CI:-0.8~4.5秒、p=0.18)、SIS改善患者割合の差は1%(-12~13、p=0.54)、ASAP vs.UCCのWMFT時間スコア差は-0.6秒(-3.8~2.6秒、p=0.72)、SIS改善患者割合の差は4%(-9~16、p=0.48)、DEUCC vs.UCCのWMFT時間スコア差は-2.1秒(-4.5~0.3秒、p=0.08)、SIS改善患者割合の差は3%(-9~15、p=0.22)であった。
重篤有害事象(入院、脳卒中再発など)は患者109例で168件報告された。8例の患者は試験中止となっている。介入に関連した有害事象は2例で、高血圧、手首の骨折であった。