非糖尿病だがインスリン抵抗性を認め、虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)を発症した患者に対し、ピオグリタゾンを投与することで、脳卒中または心筋梗塞リスクがおよそ4分の3に減少することが示された。糖尿病の発症リスクについても、ピオグリタゾン投与により半減したという。米国・イェール大学のW.N. Kernan氏らによる4,000例弱を対象に行った多施設共同無作為化二重盲検試験の結果で、NEJM誌オンライン版2016年2月17日号で発表された。
HOMA-IRが3.0超の患者にピオグリタゾンを投与
虚血性脳卒中/TIAを発症した患者では、現行の予防的治療を行っても将来的な心血管イベントのリスクが高い。一方で、脳卒中や心筋梗塞のリスク因子としてインスリン抵抗性が確認されており、インスリン感受性を改善するピオグリタゾンは脳血管疾患を有する患者に対してベネフィットをもたらす可能性が示唆されている。
そこで研究グループは、糖尿病ではないが、インスリン抵抗性指標HOMA-IRが3.0超であり、最近、虚血性脳卒中またはTIAを発症した3,876例を対象に、ピオグリタゾンの有効性と安全性を調べる試験を行った。
被験者を無作為に2群に分け、一方にはピオグリタゾン(目標用量:1日45mg)を投与し(1,939例)、もう一方の群にはプラセボを投与した(1,937例)。
主要評価項目は、致死的・非致死的脳卒中または心筋梗塞だった。
脳卒中・心筋梗塞リスクは0.76倍、糖尿病リスクは0.48倍に
被験者は2005~13年に、179の病院またはクリニックで集められた。両群とも平均年齢は63.5歳、グリコヘモグロビン値は5.8%、HOMA-IR中央値はピオグリタゾン群4.7、プラセボ群4.6、糖尿病(2010米国糖尿病学会ガイドラインに基づく)はそれぞれ6.0%、6.7%であった。
追跡期間の中央値は4.8年、試験中断は227例(5.9%)、追跡不能は99例(2.6%)だった。
解析の結果、脳卒中または心筋梗塞が発生した患者は、プラセボ群228/1,937例(11.8%)に対し、ピオグリタゾン群では175/1,939例(9.0%)と、有意に低率だった(ハザード比[HR]:0.76、95%信頼区間[CI]:0.62~0.93、p=0.007)。
糖尿病を発症したのは、プラセボ群が149例(7.7%)に対し、ピオグリタゾン群では73例(3.8%)と、発症率は半分以下に低下した(HR:0.48、95%CI:0.33~0.69、p<0.001)。
一方で、全死因死亡率は両群で同等だった(HR:0.93、95%CI:0.73~1.17、p=0.52)。
なおピオグリタゾン群は、4.5kg超の体重増(ピオグリタゾン群52.2% vs.プラセボ群33.7%、p<0.001)、浮腫(それぞれ35.6% vs.24.9%、p<0.001)、手術や入院を要する骨折(それぞれ5.1% vs.3.2%、p=0.003)に関して、いずれも有意にリスクが高かった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)