腹部手術後の低酸素血症呼吸不全、非侵襲的換気療法が有効/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2016/03/24

 

 腹部手術後に低酸素血症呼吸不全を発症した患者に対し、顔面マスクを介して行う非侵襲的換気療法は、標準酸素療法と比較して7日以内の気管再挿管の発生率が12%低下したことが示された。フランス、サン・テロワ大学病院のSamir Jaber氏らが、患者293例を対象に行った無作為化並行群間比較試験の結果で、JAMA誌オンライン版2016年3月15日号で発表した。結果を踏まえて著者は、「こうした患者において非侵襲的換気療法の使用を支持する結果が示された」とまとめている。

気管再挿管や医療ケア関連感染症の発生率を比較
 研究グループは2013年5月~14年9月にかけて、フランス20ヵ所の集中治療室(ICU)で、腹部手術後7日以内に低酸素血症呼吸不全を発症した患者293例を対象に試験を行った。被験者は、酸素分圧が室内気呼吸で60mmHg未満または酸素飽和度(SpO2)が90%以下、または15L/分の酸素呼吸で80mmHg未満、それに加えて呼吸速度が30/分超、または臨床的に激しい呼吸筋運動や強制呼吸の徴候が認められた。

 被験者は無作為に2群に割り付けられ、一方には標準酸素療法(最大15L/分でSpO2を94%以上に維持)を、もう一方には顔面マスクを用いた非侵襲的換気療法(NIV、呼気圧支持レベル:5~15cmH2O、終末呼気陽圧:5~10cmH2O、吸入酸素濃度:SpO2 94%以上に滴定)を行った。

 主要評価項目は、無作為化から7日以内の気管再挿管だった。副次評価項目は、ガス交換、30日時点における侵襲的換気療法非使用生存、医療ケア関連の感染症、90日死亡などだった。

医療ケア関連の感染症も17.8%低下
 被験者の平均年齢は63.4歳、男性は224例だった。

 無作為化から7日以内の気管再挿管率は、標準酸素療法群が45.5%(145例中66例)に対し、NIV群が33.1%(148例中49例)と有意に低率だった(絶対差:-12.4%、95%信頼区間[CI]:-23.5~-1.3、p=0.03)。

 侵襲的換気療法非使用生存期間も、標準酸素療法群が23.2日に対しNIV群が25.4日と有意に延長し(絶対差:-2.2日、95%CI:-0.1~4.6、p=0.04)、医療ケア関連の感染症発症率も標準酸素療法群49.2%に対しNIV群は31.4%と有意に低率だった(同:-17.8%、-30.2~-5.4、p=0.003)。90日死亡率は、標準酸素療法群21.5%に対し、NIV群では14.9%だった(p=0.15)。ガス交換について有意差はみられなかった。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)