欧州連合(EU)で先に承認された医療機器は、米国で先に承認された医療機器と比べて、市販後の安全性に関する警告およびリコールの割合が高いことが、ハーバード大学リベラルアーツ学部のThomas J Hwang氏らによる検討の結果、示された。EUでは、医療機器の承認は民間の認証機関によって行われ、性能基準を満たし安全と見なされれば、同機関が有効性のエビデンスを求めることはほとんどない。そのためハイリスク医療機器についても、米国では食品医薬品局(FDA)が前向き臨床試験を求めるが、EUでは速やかに承認される。そうした中で、厳正な臨床試験が行われずに承認された埋設医療機器の安全性をめぐる議論が巻き起こったのを契機に、EUと米国で規制見直しを求める声が高まっているという。BMJ誌オンライン版2016年6月28日号掲載の報告。
EU先行承認 vs.米国先行承認について調査
研究グループは、EUで先行して導入された高性能医療機器の安全性警告とリコール、主な試験アウトカムの公表およびその後の米国での承認について調べるコホート試験を行った。
対象としたのは、2005~10年の間にCEマーキング(Conformite Europeenne marking)の認証を受けEUで承認された心血管系、整形外科系および神経学系の新規医療機器。公的および民間のデータベースを2016年1月時点で検索して、承認についてのプレスリリースおよび発表状況を調べ、またFDAと欧州規制当局のデータベースで米国の承認および安全性警告とリコール状況を調べた。Medline、Embase、Web of Scienceでピアレビューについても調べた。
試験サンプル医療機器の新規性を“重大革新”と“転用拡大”に分類し、機器およびあらゆる安全性警告および回収に関する記述データを抽出。線形回帰モデルを用いて、因子と、EUと米国の承認の違いとの関連を調べた。また、Cox比例ハザードモデルを用いて、因子と安全性警告、リコールとの関連、および重大革新に分類された医療機器の試験アウトカム発表との関連を調べた。
モデルは、時間、治療区分、規制の経路、スポンサー会社の規模、EUでの先行承認、EUでのみ承認について調整を行った。
承認後5年で試験結果が入手できるのは全体で37%
対象期間中、全体で309個の新規医療機器がCEマーキングの認定を受けていた。79%が心血管系で、整形外科系12%、神経学系9%であった。4分の1(75個、24%)が“重大革新”の医療機器で、多く(56%)が大会社によって開発されたものだった。
309個のうち206個(67%)が、米国およびEUの両者で承認されたものであったが、うち63%(129/206個)が、EUで先に承認されたものだった。これらEU先行承認医療機器について、米国先行承認医療機器と比較した安全性警告およびリコールに関する補正後ハザード比(HR)は、2.9(95%信頼区間[CI]:1.4~6.2、p=0.005)であった。
重要試験の結果が発表されていた割合は、重大革新に分類される医療機器でも49%(37/75個)であった。また、全体の承認後5年の発表率は37%であった。
著者は、「試験発表率の低さは、より透明性の高い規制を求めていることを意味するものと受け止めるべき。患者および臨床医は、治療方針を決めるための情報を求めている」と指摘している。