神経線維腫症1型と手術不能な叢状神経線維腫の小児患者に対し、開発中の経口selumetinibを投与することで、約7割で腫瘍容積が2割以上減少することが示された。米国国立がん研究所のEva Dombi氏らが、第I相臨床試験の結果、明らかにした。神経線維腫症1型関連の叢状神経線維腫は、RASマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)シグナル伝達が活発であるのが特徴で、現状では有効な薬物療法はない。NEJM誌2016年12月29日号掲載の報告。
1日2回、20~30mg/m2を長期に投与
研究グループは、神経線維腫症1型と手術不能な叢状神経線維腫の小児・年少患者(範囲:3.0~18.5歳)を対象に試験を行い、selumetinibの最大耐用量と血漿中薬物動態について評価を行った。
selumetinibは、1日2回(20~30mg/m
2)、28日サイクルで継続投与した。また、神経線維腫症1型関連の神経線維腫のマウスモデルにも、同様にselumetinibの投与と評価を行った。
ベースラインからの叢状神経線維腫容積の増減について、容積測定MRI解析法を用いてモニタリングを行い、治療に対する反応を評価した。
最大耐用量は25mg/m2と推奨成人用量の約6割
被験者は24例で年齢中央値は10.9歳、ベースラインの腫瘍容積中央値は1,205mL(範囲:29~8,744mL)だった。投与サイクル中央値は30回と長期的に行われ、最大耐用量は25mg/m
2と、推奨成人用量の約60%だった。
結果、selumetinib投与によって、腫瘍容積がベースラインから20%以上減少(部分奏効)が認められたのは、24例中17例(71%)だった。マウスでは18匹中12匹(67%)で神経線維腫容積の減少が認められた。
なお、腫瘍容積がベースラインから20%以上増大(疾患進行)例は報告されていない。一方でベースラインでは認められた、腫瘍関連の疼痛、身体の美観的損傷(disfigurement)、運動機能障害が、投与後に改善するという事例的エビデンスが観察された。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)