2型糖尿病に進行するリスクが高い前糖尿病状態のスクリーニングとして、HbA1cは感度も特異度もどちらも不十分であり、空腹時血糖値は特異度が高いものの感度が低いことが示された。英国・オックスフォード大学のEleanor Barry氏らが、前糖尿病状態のスクリーニングと介入に関するシステマティックレビューとメタ解析の結果、明らかにした。前糖尿病患者を対象とした試験で、生活習慣病の評価やメトホルミンが2型糖尿病の発症を遅延または予防する可能性が示唆されていたが、前糖尿病状態をどう定義し検出するのが最も良いかについて統一した見解はこれまでなかった。著者は、「スクリーニングは不確かであり、不必要な予防的介入を受ける患者や、逆に必要であるにもかかわらず介入を受けていない患者が多くいるかもしれない」と指摘した上で、「早期発見・早期治療の方針は、糖尿病のハイリスク者すべてに有効というわけではなく、この方針だけでは2型糖尿病の世界的流行に実質的な影響はないだろう」とまとめている。BMJ誌2017年1月4日号掲載の報告。
スクリーニングの診断精度と予防的介入の有効性をメタ解析で検証
研究グループは、Medline、PreMedline、Embaseを用い、前糖尿病状態の診断精度(耐糖能異常、空腹時血糖異常、HbA1c高値)を評価した実証的研究、ならびにスクリーニングで特定された集団で介入群と対照群を比較した研究(無作為化試験や介入試験)について、言語は制限せず検索するとともに、研究プロトコルおよび影響力が大きな論文についてはGoogle Scholarで引用追跡を行って試験の詳細と追加論文を調査し、システマティックレビューを行った。
2,874報(titles)が精査され、138試験(計148論文)が本レビューに組み込まれた。メタ解析は、前糖尿病状態を特定するスクリーニングの診断精度の検討、ならびに生活習慣改善とメトホルミン療法による2型糖尿病発症の相対リスクの検討の2部構成とし、スクリーニングに関する研究49件および介入試験50件が最終解析の対象となった。
HbA1cは感度・特異度とも低く、空腹時血糖値は感度が低い
前糖尿病状態のスクリーニングに関しては、それぞれの研究で異なるカットオフ値を使用していたが、HbA1cの感度は0.49(95%信頼区間[CI]:0.40~0.58)、特異度は0.79(95%CI:0.73~0.84)、空腹時血糖値の感度は0.25(95%CI:0.19~0.32)、特異度は0.94(95%CI:0.92~0.96)であった。スクリーニング法の違いによって、特定される部分集団が異なった。例えば、HbA1cで前糖尿病状態と診断された人の47%は、空腹時血糖や耐糖能の評価では正常であった。
2型糖尿病の発症リスクについては、6ヵ月~6年間の追跡調査で生活習慣への介入により相対リスクが36%(95%CI:28~43%)低下し、追跡調査後には20%(95%CI:8~31%)となった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)