救急退院後の早期死亡、入院率や疾患との関連は?/BMJ

米国では、救急診療部を受診したメディケア受給者の多くが、致死的疾患の既往の記録がないにもかかわらず、退院後早期に死亡していることが、ハーバード大学医学大学院のZiad Obermeyer氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2017年2月1日号に掲載された。米国の救急診療部受診者は毎年20%近くも増加し、その結果として毎日、膨大な数の入院/退院の決定がなされている。また、入院率は病院によってかなりのばらつきがみられるが、その患者転帰との関連は不明だという。
入院後と退院後の早期死亡を後ろ向きコホート研究で評価
研究グループは、救急診療部退院後の早期死亡の発生状況を調査し、病院と患者の評価可能な特徴によってリスクのばらつきの原因を探索するために、レトロスペクティブなコホート研究を行った(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成による)。解析には、2007~12年の救急診療部受診を含むメディケアプログラムの医療費支払い申請のデータを用いた。メディケア受給者のうち、医療費が平均的な20%の集団をサンプルとした。入院患者および退院患者の週間死亡率を算出した。
健常な地域住民に限定するために、介護施設入居者、90歳以上、緩和治療やホスピスケアの受療者、致死的疾患の診断(例:救急診療部を受診し心筋梗塞と診断、受診の前年に悪性腫瘍と診断など)を受けた患者は除外した。
主要評価項目は、救急診療部退院から7日以内の死亡とし、入院患者として入院、転院、緩和治療やホスピス入居で退院した患者は評価から除外した。
入院率が低い病院は患者の健康状態が良好だが、退院後早期死亡率が高い
2007~12年に救急診療部を退院した1,009万3,678例(受診時の平均年齢:62.2歳、女性:59.5%、白人:76.2%)のうち、1万2,375例(0.12%)が退院後7日以内に死亡し、全国的な年間早期死亡数は1万93例であった。死亡時の平均年齢は69歳、男性が50.3%、白人が80.9%を占めた。早期死亡例の死亡証明書に記載された主な死因は、アテローム動脈硬化性心疾患(13.6%)、急性心筋梗塞(10.3%)、慢性閉塞性肺疾患(9.6%)、糖尿病合併症(6.2%)、うっ血性心不全(3.1%)、高血圧合併症(3.0%)、肺炎(2.6%)であった。8番目に頻度の高い死因は麻薬の過量摂取(2.3%)であったが、退院時の診断名は筋骨格系(腰痛15%、体表損傷10%)が多かった。
救急診療部受診者の5段階入院率別(0~22%、23~33%、34~41%、42~50、51~100%)の解析では、入院患者の死亡率はどの病院も最初の1週間が最も高く、その後急速に低下したが、退院患者の死亡率は病院の入院率によってばらつきがみられた。入院率が最も高い病院は退院直後の死亡率がその後の期間に比べて低かったのに対し、入院率が最も低い病院の退院患者は早期死亡率が高く、その後急速に低下した。
退院後7日死亡率は、入院率が最も低い病院が0.27%と最も高く、入院率が最も高い病院(0.08%)の3.4倍であった。しかしながら、入院と退院を合わせた全救急診療部受診者の7日死亡率は、最低入院率病院が最高入院率病院より71%(95%信頼区間[CI]:69~71)も低かった。したがって、入院率が低い病院は患者の健康状態が全般に良好だが、ベースラインの健康状態だけでは、入院率の低い病院の退院後早期死亡率の高さを説明できないと考えられた。
多変量解析では、入院と退院を合わせた全救急診療部受診者の7日死亡率は、高齢者、男性、白人、低所得者、受診費用が低い救急診療部、受診者数の少ない救急診療部で高く(すべて、p<0.001)、退院患者に限ると、男性と受診費用が低い救急診療部は逆に7日死亡率が低くなった(いずれも、p<0.001)。
異常な精神状態(リスク比:4.4、95%CI:3.8~5.1)、呼吸困難(3.1、2.9~3.4)、不快感/疲労(3.0、2.9~3.7)は、他の診断名の患者に比べ早期死亡率が高かった。
著者は、「これらの早期死亡の予防の可能性を探索するために、さらなる研究を進める必要がある」とし、「早期死亡に関連する退院時の診断、とくに異常な精神状態、呼吸困難、不快感/疲労のような疼痛を伴わない症候性の疾患は、特有の臨床的特徴(signature)である」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)
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