高齢者の潜在性甲状腺機能低下症にホルモン療法は有効か?/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2017/04/14

 

 潜在性甲状腺機能低下症の治療において、これまでレボチロキシンの使用は議論の的であったが、無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験(TRUST試験)の結果、高齢患者に対するレボチロキシンの有効性は認められなかった。英国・グラスゴー王立診療所のDavid J Stott氏らが報告した。潜在性甲状腺機能低下症に対するレボチロキシン補充療法については、小規模な無作為化比較試験しかなく、治療のリスクや有効性に関するエビデンスは限られていた。NEJM誌オンライン版2017年4月3日号掲載の報告。

潜在性甲状腺機能低下症の高齢患者約700例で、プラセボ vs.レボチロキシン

 研究グループは、65歳以上で潜在性甲状腺機能低下(TSH:甲状腺刺激ホルモン[サイロトロピン]値4.60~19.99mIU/L、遊離サイロキシン値は正常範囲内)が持続している患者737例を、レボチロキシン群368例(50μg/日[または体重50kg未満か冠動脈疾患既往歴がある場合は25μg/日から開始]、TSH値によって投与量を調整)、またはプラセボ群(369例)に、二重盲検法により無作為に割り付けた。

 主要評価項目は、甲状腺機能低下症の症状スコアならびに甲状腺関連QOLに関する質問票の疲労度スコアの変化であった(両スコアとも範囲0~100、スコアが高いほど症状または疲労感が強い、臨床的に意義のある有意な差は最低9点)。

潜在性甲状腺機能低下症群とプラセボ群で、症状、疲労度の改善に有意差なし

 潜在性甲状腺機能低下症の被験者は、平均年齢74.4歳、53.7%(396例)が女性であった。

 平均(±SD)TSH値は、ベースライン6.40±2.01mIU/Lから、1年後にはプラセボ群で5.48mIU/Lに、レボチロキシン群(平均投与量50μg)で3.63mIU/Lに低下した(p<0.001)。1年後における甲状腺機能低下症症状スコアのベースラインからの変化は、プラセボ群0.2±15.3、レボチロキシン群0.2±14.4(群間差:0.0、95%信頼区間[CI]:-2.0~2.1)、同様に疲労度スコアの変化はそれぞれ3.2±17.7および3.8±18.4(群間差:0.4、95%CI:-2.1~2.9)であり、いずれも両群間で有意差は認められなかった。

 副次評価項目についても、レボチロキシンの有効性は示されなかった。とくに注目すべき有害事象としてあらかじめ規定された重篤な有害事象(心房細動、心不全、骨折、新規骨粗鬆症)について、有意な増加は認められなかった。

 なお、心血管イベントの発生や死亡率に関するレボチロキシンの影響については、検出力不足であった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 吉岡 成人( よしおか なりひと ) 氏

NTT東日本札幌病院 院長

J-CLEAR評議員

原著論文はこちら

Stott DJ, et al. N Engl J Med. 2017 Apr 3. [Epub ahead of print]