2015年に企業から金銭を受け取った米国医師は全体の48%を占め、その総額は24億ドル(1ドル110円とすると2,640億円)であったことが明らかにされた。金銭受け取り者の割合は外科医がプライマリケア医と比べて約1.7倍高く、また、男性のほうが女性よりも高いことなども判明した。米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のKathryn R. Tringale氏らが、米国公的医療保険の運営主体であるメディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)が作成する、企業から医師・医療機関への金銭供与に関する公開報告書「Open Payments」2015年版を基に調査・分析したもので、JAMA誌2017年5月2日号で発表した。
93万人超の米国医師について調査
研究グループは、「Open Payments」2015年版を基に、企業から米国医師への金銭供与の額とその種類などについて後ろ向き観察研究を行った。
調査対象となったのは、93万3,295人の米国医師M.D.(Doctor of Medicine)とD.O.(Doctor of Osteopathic Medicine)で、そのうち男性は62万166人(66.4%)、女性は31万3,129人(33.6%)だった。
医師の性別や、プライマリケア医、外科医、専門医、心血管インターベンショニストなどの専門科別で回帰分析を行い、結果を比較評価した。
金銭受け取りは、外科医61%、プライマリケア医48%
2015年に企業からの金銭を受け取った医師は、全米で44万9,864人(うち女性は29.8%)と、医師全体の約48%を占めた。その総額は24億ドルで、内訳をみると、コンサルティング料や飲食代などでの名目支払いが18億ドル、持分(ロイヤリティやライセンス料)供与が5億4,400万ドル、研究費への支払いが7,500万ドルだった。
金銭を受け取った医師の割合は、プライマリケア医が47.7%だったのに対し、外科医は61.0%と約1.7倍高かった(絶対差:13.3%、95%信頼区間[CI]:13.1~13.6、オッズ比[OR]:1.72、p<0.001)。また、受け取り額も、プライマリケア医が平均2,227ドル(同:2,141~2,314)に対し、外科医は平均6,879ドル(同:5,895~7,862)と高額だった。
地域性や医師が個人事業主か否かで補正後の検討では、同じ専門科の中で男性医師が女性医師よりも、コンサルティング料などを受け取る割合が大きかった。具体的には、外科医では男性が62.5%、女性が56.5%(OR:1.28)、プライマリケア医ではそれぞれ50.9%と43.0%(OR:1.38)、専門医は36.3%と33.4%(OR:1.15)、インターベンショニストは58.1%と40.7%(OR:2.03)だった(いずれもp<0.001)。
同様に、ロイヤリティやライセンス料の供与を受けた割合も男性医師が女性医師よりも高く、外科医ではそれぞれ1.2%と0.03%(OR:43.20)、プライマリケア医は0.02%と0.002%(OR:9.34)、専門医は0.08%と0.01%(OR:3.67)、インターベンショニストが0.13%と0.04%(OR:7.98)だった(いずれもp<0.001)。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)