心不全の突然死、科学的根拠に基づく薬物療法で減少/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2017/07/19

 

 収縮能が低下した心不全の外来患者では、突然死の発生率が経時的に大きく低下していることが、英国心臓財団グラスゴー心血管研究センターのLi Shen氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌2017年7月6日号に掲載された。ACE阻害薬、ARB、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬などの登場以降、科学的根拠に基づく薬物療法の使用が増えるに従って、収縮能が低下した症候性心不全患者の突然死のリスクは、経時的に低下している可能性が指摘されているが、その詳細の調査は十分ではないという。

駆出率≦40%の症候性心不全患者約4万例を解析
 研究グループは、駆出率≦40%の症候性心不全患者(NYHAクラスII~IV)を対象に、過去20年間に実施され、1,000例以上を登録した臨床試験の参加者(植込み型除細動器[ICD]装着例は除外)のデータを解析した(中国国家留学基金管理委員会と英国グラスゴー大学の助成による)。

 重み付き多変量回帰を用いて、突然死の発生率の経時的な動向の検討を行った。また、Cox回帰モデルを用いて、各試験の突然死の補正ハザード比(HR)を算出した。突然死の累積発生率は、無作為化後の複数の時点(30、60、90、180日、1、2、3年)で、心不全の診断から無作為化までの期間別(≦3ヵ月、3~6ヵ月、6~12ヵ月、1~2年、2~5年、>5年)に評価した。

 1995~2014年に実施された12件の臨床試験の参加者4万195例が、解析の対象となった。突然死は3,583例(8.9%)で発生した。

突然死のリスクが19年間で44%低下
 ベースラインの全体の平均年齢は65歳で、77%が男性であった。95%がNYHAクラスII/IIIの患者で、駆出率の平均値は28%(試験ごとの平均値の範囲:23~32%)、心不全の原因の62%が虚血性であった。

 ACE阻害薬とARBは90%以上の患者が使用していた(ACE阻害薬非使用例を対象とした1試験を除く)。一般的な傾向として、より最近の試験ほど、β遮断薬とミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の使用例が多かった。

 突然死を起こした患者は起こさなかった患者と比較して、高齢、男性、低い駆出率、高い心拍数、重い心不全症状、心不全の原因が虚血性、既往歴に心筋梗塞、糖尿病、腎機能障害、といった患者が多かった。また、突然死を起こした患者は、冠動脈血行再建術施行例が少なかった。

 突然死の年間発生率は、最初期の試験(1998年に終了)の6.5%から、最近の試験(2014年に終了)の3.3%まで、経時的に低下した(傾向検定:p=0.02)。試験全体の突然死のリスクは、19年間で44%低下した(HR:0.56、95%信頼区間[CI]:0.33~0.93、p=0.03)。

 無作為化後90日時の突然死の累積発生率は、最初期の試験が2.4%、最近の試験は1.0%であった。概して、180日時の突然死の累積発生率は90日時の約2倍となり、最近の試験になるほど、同様の傾向を示しつつ発生率が低下した。また、心不全の診断後の経過が短い患者は、長い患者と比較して、突然死の発生率は高くなかった。

 駆出率別の解析では、どのサブグループも、試験全体と同様に突然死発生率が低下する傾向がみられ、駆出率が低いサブグループで突然死が多かった。

 著者は、「これらの知見は、突然死に対するエビデンスに基づく薬物療法の蓄積されたベネフィットと一致する」としている。

(医学ライター 菅野 守)