12歳以上の第VIII因子インヒビター保有の血友病A患者に対し、開発中のバイスペシフィック抗体emicizumab(ACE910)の週1回皮下投与は、年間出血イベントリスクを87%低減したことが報告された。ドイツ・ボン大学病院のJohannes Oldenburg氏らが、14ヵ国43ヵ所の医療機関を通じて行った第III相非盲検無作為化試験「HAVEN 1」の結果で、NEJM誌オンライン版2017年7月10日号で発表した。emicizumabは、第IX因子と第X因子を結び付けることで、血友病A患者に不足しており止血に必要な第VIII因子の機能を修復する。小規模ではあったが第I相試験で、インヒビター保有の有無を問わず血友病A患者において、出血の抑制効果が確認されており、今回の第III相試験では、第VIII因子インヒビター保有患者に対する週1回の予防投与を評価した。
発症時バイパス止血製剤歴のある患者109例を対象に試験
研究グループは、発症時バイパス止血製剤歴のある12歳以上の第VIII因子インヒビター保有の血友病A患者(男性)109例(年齢中央値28歳)を対象に試験を行った。
被験者を無作為に2対1に割り付け、一方にはemicizumab(週1回、皮下投与)の予防投与を行い(グループA)、もう一方の群には予防投与を行わなかった(グループB)。
主要評価項目は、グループAとグループBの出血率の群間差だった。
なお被験者のうち、予防的バイパス止血製剤治療の既往者には、emicizumabによる予防投与が行われた(グループC)。
週1回予防投与群では出血イベントなしが63%
年間出血率は、グループB(18例)が23.3件/年(95%信頼区間[CI]:12.3~43.9)に対し、グループA(35例)では2.9件/年(95%CI:1.7~5.0)と有意に低率であることが示された(群間差:87%、p<0.001)。
出血イベントが認められなかった被験者は、グループBでは1例(6%)だったのに対し、グループAでは22例(63%)であった。
また、主要評価の検討に組み入れられなかったグループC(49例)のうち24例の評価において、以前の予防的バイパス止血製剤治療に比べ、emicizumabの予防投与で出血率が79%低減したことが確認された(p<0.001)。
有害事象は全体で198例が報告された。そのうち103例がemicizumabの投与を受けた被験者で報告されたが、最も頻度の高かったのは注射部位反応(15%)であった。重篤有害事象の報告は9例12件が報告された。血栓性微小血管障害症と血栓症が主要解析で2例ずつ報告されている。いずれも破綻出血を呈し活性型プロトロンビン複合体製剤(PCC)の複数回投与を受けていた。抗薬物抗体の検出は報告されなかった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)