重症僧帽弁閉鎖不全症(MR)に対し、新たに開発された経カテーテル僧帽弁修復(TMVr)デバイス「エドワーズPASCAL TMVrシステム」は、手術終了時点の成功率が96%、30日時点のデバイス成功率は78%と高いことが示された。スイス・ベルン大学病院のFabien Praz氏らによる、ヒトでは初となる多施設共同前向き観察試験の結果で、「今回の試験で実用可能性は立証された。さらなる試験を行い、デバイスの手技上および長期の臨床的アウトカムへの影響を明らかにする必要がある」と報告している。新デバイスは、従来デバイスの限界を見据えて左心房でのナビゲーションを容易なものとし、セントラルスペーサーの実用化でMRの改善を向上するなどしたものだという。Lancet誌2017年8月19日号掲載の報告。
5ヵ国7施設で特例的使用試験で安全性と有効性を評価
試験は、5ヵ国(カナダ、ドイツ、ギリシャ、スイス、米国)7つの3次医療病院で行われ、経カテーテル僧帽弁修復を受ける患者に、特例的にエドワーズPASCAL TMVrシステムを使用するプログラムを用いてデータの収集が行われた。症候性で機能的に重度、器質的または混合型MRで、高リスクもしくは手術不能とみなされた患者を適格とした。
手技の安全性と有効性を、デバイス留置時、退院時、留置後30日時点で前向きに評価。主とした試験エンドポイントは、手術終了時に評価した技術的成功率と、留置後30日時点で評価したデバイス成功率であった。評価にはMitral Valve Academic Research Consortium定義を用いた。
手術終了時の技術成功率は96%、30日時点デバイス成功率は78%
2016年9月1日~2017年3月31日の間に、23例(年齢中央値75歳[IQR:61~82])がエドワーズPASCAL TMVrシステムを用いて、中等症~重症(grade 3+)または重症(grade 4+)MRに対する治療を受けた。ベースライン時において、EuroScore IIスコア中央値は7.1%(IQR:3.6~12.8)、MR修復のSTS PROM(Society of Thoracic Surgeons predicted risk of mortality)スコア中央値は4.8%(同:2.1~9.0)、MR置換のSTS PROMスコア中央値は6.8%(同:2.9~10.1)であり、22例(96%)が、NYHA分類IIIまたはIVであった。
全患者において1個以上のデバイス留置が成功し、22例(96%)がgrade2+以下のMRになった。なお、6例(26%)が2個のデバイス留置を受けた。
周術期合併症の発生は、2例(9%)が報告された。1例は小出血イベントで、1例は一過性脳虚血発作であった。
MRの解剖学的複雑さにもかかわらず、22例(96%)で技術的成功が達成された。また、30日時点のデバイス成功例は18例(78%)で認められた。30日フォローアップ中の死亡は3例(13%)で、留置後30日生存した患者20例のうち19例(95%)はNYHA分類がIまたはIIであった。