軽症~中等症の慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対するチオトロピウム(商品名:スピリーバ)は肺機能の低下を抑制することが、中国・国立呼吸器疾患センターのYumin Zhou氏らが841例を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果、示された。軽症~中等症COPD患者は、症状がみられることが少なく薬物療法が行われることはほとんどない。研究グループは、そうした患者へのチオトロピウム投与は、肺機能を改善し、肺機能低下を抑制するのではないかと仮説を立て検証試験を行った。NEJM誌2017年9月7日号掲載の報告。
チオトロピウムを24ヵ月投与してプラセボ群とFEV1の変化を比較
研究グループは、GOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)の基準でステージ1(軽症)または2(中等症)の患者841例を対象に試験を行った。被験者を無作為に2群に分け、一方にはチオトロピウム(18μg)を1日1回2年間吸入投与し(419例)、もう一方にはプラセボを投与した(422例)。
主要エンドポイントは、ベースラインから24ヵ月後の気管支拡張薬吸入前の1秒量(FEV
1)変化の群間差だった。副次的エンドポイントは、ベースラインから24ヵ月後の気管支拡張薬吸入後のFEV
1変化の群間差や、30日~24ヵ月の気管支拡張薬吸入前および吸入後のFEV
1年間低下量の群間差などだった。
チオトロピウム群のFEV1は1ヵ月後から高値を維持
最終解析の対象は、チオトロピウム群388例、プラセボ群383例だった。
チオトロピウム群のFEV
1は、気管支拡張薬使用前・後ともに試験開始1ヵ月後から一貫してプラセボ群に比べ高く、その平均群間差は、気管支拡張薬吸入前が127~169mL、吸入後は71~133mLだった(いずれの比較についてもp<0.001)。
主要エンドポイントの24ヵ月後の気管支拡張薬吸入前FEV
1低下量の平均値については、チオトロピウム群38mL/年、プラセボ群53mL/年であり、有意差はなかった(群間差:15mL/年、95%信頼区間[CI]:-1~31、p=0.06)。
気管支拡張薬吸入後FEV
1の年間平均低下量については、チオトロピウム群が29mL/年と、プラセボ群51mL/年に比べ有意に少なかった(群間差:22mL/年、95%CI:6~37、p=0.006)。
有害事象の発現率はチオトロピウム群、プラセボ群でほぼ同程度だった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)