赤血球輸血を受けた患者において、妊娠歴がある女性ドナーからの輸血は男性ドナーからの輸血と比べ、男性レシピエントでは全死因死亡率の上昇との関連がみられ、女性レシピエントでは同様の関連は確認されなかった。また、妊娠歴のない女性ドナーからの輸血は、男女ともにレシピエントの死亡率上昇とは関連しなかった。オランダ・Sanquin ResearchのCamila Caram-Deelder氏らが、初回輸血レシピエントを対象にした後ろ向きコホート研究の結果を報告した。これまで、女性ドナーからの赤血球輸血は、男性ドナーと比較してレシピエントの死亡率が高いことが観察されていたが、ドナーの妊娠歴が関与するかは不明であった。JAMA誌2017年10月17日号掲載の報告。
輸血患者の死亡率、男性ドナーと女性ドナーの妊娠歴の有無で評価
研究グループは、2005年5月30日~2015年9月1日に、オランダの主要6病院で初回輸血を受けた患者を登録し解析した(最終追跡日2015年9月1日)。主要解析は、単一ドナー(男性ドナーのみ、妊娠歴のない女性ドナーのみ、妊娠歴のある女性ドナーのみ)から赤血球輸血を受けた患者を対象とし、Cox比例ハザードモデルのライフテーブルや時間変数を用いて、各ドナーから受けた輸血と死亡との関連を調べた。主要評価項目は、追跡期間中の全死因死亡率とした。
主要解析対象となったレシピエントは3万1,118例(年齢中央値65歳[四分位範囲:42~77歳]、男性1万4,995例[48%]、女性1万6,123例[52%])で、計5万9,320単位の赤血球輸血を受けた。ドナーは、男性88%、妊娠歴のある女性6%、妊娠歴のない女性6%であった。
妊娠歴がある女性からの輸血を受けた男性、死亡リスクが1.13倍
試験対象期間の死亡は、3万1,118例中3,969例であった(死亡率13%)。
男性レシピエントにおける赤血球輸血後の全死因死亡(件数/1,000人年)は、ドナーが妊娠歴のある女性の場合の101に対し男性ドナーの場合は80で、輸血当たりの時間依存性死亡ハザード比(HR)は1.13(95%CI:1.01~1.26、p=0.03)であった。一方、妊娠歴のない女性ドナーからの輸血と男性ドナーからの輸血を比較すると、全死因死亡は78 vs.80で、死亡HRは0.93(95%CI:0.81~1.06、p=0.29)であった。
女性レシピエントにおいては、妊娠歴のある女性ドナー vs.男性ドナーの全死因死亡は74 vs.62、死亡HRは0.99(95%CI:0.87~1.13、p=0.92)であり、妊娠歴のない女性ドナー vs.男性ドナーは74 vs.62、HRは1.01(95%CI:0.88~1.15、p=0.92)であった。
著者は、後ろ向きコホートで死因に関する情報がないことなどを研究の限界として挙げたうえで、「本研究の結果については、今後、さらなる研究で再現性を検証する必要があり、臨床的意義を明らかにするとともに、このような差異が起こるメカニズムを特定することが重要な課題である」とまとめている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)