小児および若年成人における再発・難治性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病(ALL)に対して、抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)発現T細胞療法(CAR-T療法)であるtisagenlecleucelの単回投与は、長期にわたる持続的な寛解をもたらし、Grade3以上の有害事象は一過性であることが確認された。米国・ペンシルベニア大学のShannon L. Maude氏らが、11ヵ国の25施設で実施された国際共同第II相臨床試験の結果を報告した。単一施設で行われたtisagenlecleucelの第I・IIa相試験では、同患者における完全寛解率は93%と高く、毒性は重篤であったものの、ほとんどが可逆的であることが示されていた。NEJM誌2018年2月1日号掲載の報告。
小児および若年成人患者75例でtisagenlecleucelの有効性を評価
試験は、小児(スクリーニング時3歳以上)および若年成人(診断時21歳未満)の再発・難治性CD19陽性B細胞性ALL患者を対象に、tisagenlecleucelを単回投与し評価した。tisagenlecleucelは、T細胞活性化シグナルを伝達するCD3ゼータ領域と共刺激シグナルを伝達する4-1BB(CD137)領域を含み、CD19に対するCARを発現するよう、レンチウイルスベクターで形質導入された自己T細胞を用いて作られた。
主要評価項目は、3ヵ月以内の全寛解率(完全寛解、または、血液学的回復が不完全な完全寛解の割合)。副次評価項目は、フローサイトメトリーで評価された検出できない微小残存病変を伴う完全寛解または血液学的回復が不完全な完全寛解、寛解持続期間、無イベント生存、全生存、安全性などとした。
2015年4月8日~2017年4月25日(データカットオフ日)に、事前に計画された解析に関して75例がtisagenlecleucelの投与を受け、有効性が評価された。
全寛解率は81%、寛解は持続、Grade3以上の有害事象発現は73%
3ヵ月以内の全寛解率は81%で、治療に反応した全患者においてフローサイトメトリーで評価された微小残存病変は陰性であった。
6ヵ月時点の無イベント生存率は73%(95%CI:60~82%)、全生存率は90%(95%CI:81~95%)、12ヵ月時点はそれぞれ50%(95%CI:35~64%)、76%(95%CI:63~86%)であった。寛解持続期間は中央値に未到達であり、tisagenlecleucelは血液中に最長20ヵ月間残留していることが確認された。
tisagenlecleucelとの関連が疑われたGrade3/4の有害事象は、73%の患者に発現した。サイトカイン放出症候群の発現率は77%で、このうち48%の患者はトシリズマブで治療された。神経学的イベントは40%の患者に発現したが、支持療法で管理され、脳浮腫は報告されなかった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)