片頭痛は、虚血性脳卒中や心筋梗塞との関連が知られている。デンマーク・オーフス大学病院のKasper Adelborg氏らは、一般集団ベースのコホート研究を行い、片頭痛は出血性脳卒中や静脈血栓塞栓症、心房細動/粗動とも関連することを示した。BMJ誌2018年1月31日号掲載の報告。
片頭痛患者と一般集団で心血管疾患リスクを比較
研究グループは、片頭痛患者と一般集団において、7つの心血管疾患のリスクを比較する全国的な一般集団ベースのコホート研究を実施した(オーフス大学などの助成による)。
1995~2013年に、デンマーク全国患者登録(DNPR)に記録された片頭痛患者5万1,032例と、年齢、性別、暦年をマッチさせた一般集団51万320例が解析の対象となった。主要評価項目は、Cox回帰分析に基づく、併存疾患としての心血管アウトカムの補正後ハザード比(HR)とした。
片頭痛群の診断時の年齢中央値は35歳(IQR:22~47)であり、全体の71%が女性であった。片頭痛群は、わずかに心血管疾患リスク因子や併存疾患が多かった。
解析の結果、ほとんどのアウトカムの絶対リスクは、フォローアップ期間を通じて、片頭痛群が一般集団に比べて高かった。
脳卒中は片頭痛診断後早期のリスクが高い
フォローアップ期間19年時における心筋梗塞の累積発生件数(1,000人当たり)は、片頭痛群が25件、一般集団は17件であり、虚血性脳卒中はそれぞれ45件、25件、出血性脳卒中は11件、6件、末梢動脈疾患は13件、11件、静脈血栓塞栓症は27件、18件、心房細動/粗動は47件、34件、心不全は19件、18件であった。
これらの発生率に対応して、片頭痛群は一般集団に比べ、心筋梗塞(補正後HR:1.49、95%信頼区間[CI]:1.36~1.64)、虚血性脳卒中(2.26、2.11~2.41)のリスクが有意に高く、さらに出血性脳卒中(1.94、1.68~2.23)、静脈血栓塞栓症(1.59、1.45~1.74)、心房細動/粗動(1.25、1.16~1.36)とも有意な関連を示した。一方、末梢動脈疾患(補正後HR:1.12、95%CI:0.96~1.30)と心不全(1.04、0.93~1.16)には、片頭痛との意味のある関連を認めなかった。
心不全を除く6つの心血管疾患は、いずれも片頭痛診断後1年以内の補正後HRが高い傾向がみられ、とくに脳卒中は、診断後1年以内の補正後HRが、全フォローアップ期間(0~19年)に比べて高く(虚血性脳卒中の補正後HR:8.37 vs.2.26、出血性脳卒中の補正後HR:7.89 vs.1.94)、診断後早期の発症に注意を要することが示唆された。
静脈血栓塞栓症と心不全を除く5つの心血管疾患については、前兆のある片頭痛群は前兆のない群に比べ補正後HRが高かった。また、前兆のある片頭痛群は、心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、静脈血栓塞栓症の長期リスクとの関連が認められた。
片頭痛と心血管疾患の関連は、女性が男性よりもやや強かったが、男女とも長期に持続しており、全般に加齢に伴って減弱した。また、予想どおり、若年層ではすべての心血管疾患の絶対リスクが低かった。さらに、喫煙とBMIを加えて補正しても、片頭痛と心血管疾患の関連は保持されていた。
著者は、「これらの知見は、男女ともに、片頭痛はほとんどの心血管疾患の強力かつ持続的なリスク因子であることを示唆する」と結論している。
(医学ライター 菅野 守)